2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月6日

 CNAS(新アメリカ安全保障センター)ジェリー・ヘンドリックス上級フェローが、ナショナル・インタレスト誌に「中国の選択――戦争か平和か。西太平洋の諸国は世界における中国の立場を弱めることを追求すべし」との論説を9月2日付けで書き、対中けん制策を提言しています。論旨、次の通り。

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中国の権利主張を無視

 G20会合が開かれる中、米国と西太平洋諸国は中国に南シナ海についてのハーグの仲裁判断に従うように求める経済的、外交的、軍事的な準備をしなければならない。

 中国は今、米国は西太平洋での中国の権利主張を真剣に争う気がないと信じている。7月のハーグ判断後、1カ月以上経つ。この間、中国はこの判断の執行のための米の出方を注意深く見てきたが、ハーグの判断は言葉だけにとどまると考えている。

 最近の画像は3つの人工島で新しく航空機駐機場、ミサイル施設が作られたことを示している。中国はG20会合後、スカボロー礁での軍事建設を始めるとの見方がある。米大統領選挙後、オバマ政権が終わる前に、中国はこれらの島に航空機、ミサイルを配備、不法な領海の主張を軍事力でバックアップするだろう。これは米国と地域諸国の軍事的立場を弱め、今の国際システムをボロボロにする。

 そうなる必要はない。中国の拡張を止め、法の支配を再健するためにとり得る、経済制裁から軍事行動まで一連の措置がある。

 経済的には、豪州は高い対中輸入関税を課することができる。中国が人工島から出ていかない限り、毎月、上げればよい。フィリピンは外国の裁判所で中国を訴え、フィリピン領土の占拠についての賠償を求め得る。たとえば、フィリピンは米連邦地裁に、中国が所有するニューヨークにあるウォルドルフ・アストリア・ホテルの所有権移転を求め得る。国際法に反し、不法に環礁を占拠している中国に規律を守らせるためである。

 外交的には、西太平洋諸国は世界での中国の立場の弱体化を追求すべきである。朝貢外交の伝統を拒否し、2国間の話し合いは拒否し、多数国間での話し合いにすべきである。また、米国は独立国家としての台湾の中華民国を承認する措置を始めるべきである。台湾は国際機関で正統な地位を与えられるべきである。

 軍事的には、太平洋諸国と米国は航行の自由作戦やスビ、ミスチーフ、ファイアリークロス、スカボロー礁の12カイリ内の通常の軍事行動を含む共同演習を増やすべきである。米国は上陸演習に比、台湾、越、豪、シンガポール、ラオスの部隊を招待すべきである。

 こういう行動は好戦的で、戦争の始まりを意味すると言う人もあろう。しかし中国が人工島を作り、現状を変更した原罪を忘れた議論である。またリベラルな国際秩序は脆弱で、国際社会のコンセンサスによらないと、継続しない。米国、同盟国、パートナー国は中国の行動は通らない、ハーグの判断には従うべしと通知すべきである。中国は国際法順守に譲歩するか、あるいは経済、外交、軍事的な措置を受けるかである。

 中国には、中国が自ら牢屋に入ったこと、それを開けるカギは中国だけが持っていることを理解させるべきである。

出典:Jerry Hendrix,‘China’s Choice: War or Peace?’(National Interest, September 2, 2016)
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/chinas-choice-war-or-peace-17562


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