2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月6日

 この論説は対中強硬論であるが、米国にはこういう論もあるということを知っておくべきでしょう。著者のヘンドリックス氏は自由な思考で知られる米国防総省ネットアセスメント室(ONA)の出身ですが、この部局の意見が政策に反映された事例も少なくありません。

 論説では中国をけん制する諸措置の例が挙げられています。米国による台湾の中華民国承認など、米中国交正常化時のコミュニケに反することであり、まず実施できないでしょう。国際法順守をこの論説は強調していますが、二国間の条約や約束も国際法の立派な法源です。国際法重視を言いつつ、それをないがしろには出来ません。ただ、台湾との関係の法的現状は変えなくとも、台湾との関係強化は中国をけん制する上で、重要でしょう。

 経済面での諸措置の提言については、なかなか考え及ばないような傾聴すべき内容も含まれています。中国はグローバルな世界経済に組み込まれており、それゆえに弱点もあります。グローバル経済からメリットを受けつつ国際秩序に反抗するという中国のやり方は、維持不可能です。中国がそのことに気づくのが早ければ早いほど良いです。日米などが気づかせるようにすべきです。航行の自由作戦の継続などは当然すべきでしょう。

 G20でのオバマ・習近平会談では、南シナ海問題では平行線であったとされています。「ごり押しすれば通る」と中国に思わせない措置を講じることが必要になってきています。この論説の諸提案はそういう措置を考えるにあたっては、参考になります。

  
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