2024年4月25日(木)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年10月17日

皆が建てている間は問題が顕在化しないから問題が拡大する

 貸家を建てる人は、周辺地域の現在の貸家の入居率を調べるでしょう。その際、平均を調べる人が多いと思われますが、本来は最近完成した物件の入居率を調べるべきです。昔から借家に住んでいる高齢者は、新築物件に引っ越して来たりしませんから、新築物件に新たに入居している若者のデータが重要なのです。

 将来人口が減って行くことを考えて、入居率が下がっていくことを予想すべきなのですが、そこまで考えている人は少ないかもしれません。考えていたら、到底貸し家の建設など思いつかないはずですから(笑)。

 それに加えて、今次局面での問題は、自分以外にも貸し家を建てる人が多数いる、ということです。すでに建設中の貸家、同時に着工した貸し家に加え、今後あらたに計画されて建設される貸し家もあるでしょう。こうした貸し家がすべて建ち終えた後の、新築物件数はどれくらいでしょうか? それに対して新規入居者数はどれくらいでしょうか?

 貸家の建設には、時間がかかります。したがって、多くの人が相次いで貸家の建設を思い立った場合、思い立った時と建ちあがった時で、状況が一変している可能性があるのです。

空室率上昇と家賃値下げ競争のダブルパンチに

 空家率が高まると、入居者の奪い合いで家賃の引き下げ競争が起きるかもしれません。しかし、皆が一斉に値下げをしても、入居率が上がるわけではありません。牛丼の値下げ競争であれば、ラーメン屋から客を奪うことが出来るでしょうが、貸家の値下げ競争は、外から客を奪ってくることが出来ないので、深刻です。

 さらに恐ろしいのは、値下げ競争が無限に続く可能性がある、ということです。建ててしまった以上、空き部屋にしておくよりは、安くても貸した方が得だからです。頭の体操ですが、極端な場合、ライバルが家賃2円で満室、自分は入居率ゼロという状況であれば、家賃を1円にして満室になった方が良いでしょう。相手も同じことを考えるので、御互いが家賃を1円にして入居率5割、ということになりかねないのです。


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