基地までは、ボートが揺れてひどい気分だった。それもそのはず、海峡にはつねに強い風が吹いている。遠浅で、水深は7・2~9・8㍍。漁場や航路でない、渡り鳥のルートでない、騒音や景観の問題がない、といった好条件がそろっているため、95%という驚くべき稼働率をあげている。くりかえすが、こうした適地があっても、風力の総電力への貢献は1%である。風力発電の先駆者デンマークをはじめ欧米でも、陸上、洋上ともに、稼働率はせいぜい20%前後。日本なら洋上に適地があるのでは、と帰国後、資源エネルギー庁に尋ねた。漁業権や航路、水深などの問題で適地が少ないうえ、コストは陸上の4割増との回答だった。エネルギーは適材適所、なのである。
地に足のついた エネルギー戦略を
資源小国日本が経済大国となりえたのは、地に足をつけ、得られる資源は貪欲に確保する“リスクヘッジ”をしてきたからだ。そしてもったいないからこそ、資源を効率よく使った。おかげで、世界トップクラスの省エネや高効率発電の技術が育まれた。たとえば、日本の石炭火力発電技術を石炭依存度の高い米、中、印に導入すると、13億㌧のCO2が減らせるという。これは、日本の総排出量にほぼ匹敵する。
火力にせよ、原子力にせよ、資源小国ならではの技術を活かす好機が来たのである。それらを維持して世界に展開しつつ、国内では安定供給を第一とする政策こそ、資源危機と気候変動をのりこえる道ではないか。
エネルギーセキュリティを忘れ、安易な「エコ」に踊るのは、危うい舵取りとしか思えない。
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