2024年4月16日(火)

Wedge REPORT

2010年3月12日

 しかも、稼働率はそれぞれ12%、20%とかなり低い。「エネルギー密度が低い」と表現されるように、原子力や火力の大型発電所と同じ出力を得ようとすると、広大な土地と多額の設備投資がかかる。たとえば、100万kW級の原子力発電所1基を代替する場合、必要な敷地面積は太陽光で約67平方㌔メートル(山手線圏内)、風力で約246平方㌔メートル(山手線圏内の3・5倍)。投資額は原子力3000億円に対し、太陽光6~7兆円、風力1兆円である(資源エネルギー庁)。

 こうしたことから、「太陽光、風力発電は電力の主役ではなく、あくまで脇役。20年までに最大限増やせたとしても、今の10倍の2000万kW。一次エネルギー比では一桁程度」(茅氏)と見るのが妥当だろう。

地理的条件の異なる
EUの物まねは危険

 太陽光と風力発電の導入量が世界一であり、岡田外相や福山哲郎外務副大臣らが引きあいに出すドイツを見よう。07年の電源構成比は、石炭が49%でほぼ半分を占める。次いで原子力約25%、天然ガス約12%、バイオマス等約12%、地熱・風力等2・5%などの順で、太陽光は項目にあがっていない。

 石炭は、発電1kWhあたりの温室効果ガス排出量が最大だが、ドイツは石炭を減らそうとは考えていない。褐炭を産出する産炭国であり、石炭はコスト、安定供給性、エネルギーセキュリティの点から最重要であるうえ、業界の力も大きいからだ。

 それで石炭には手をつけず、風力、バイオマス、ごみ、太陽光発電の積極的導入を進めてきた。それを可能にした背景には、欧州に縦横に張り巡らされたガスパイプラインと送電線網の存在がある。国境を越えて電力が容易に売買されるから、原子力の電源構成比約84%であるフランスの電力を、ドイツは買っている。

 そこが、島国日本と大きく異なる点である。太陽光や風力が発電できないときは出力調整が容易な火力で補うのだが、日本では自前でこのバックアップ電源が必要だ。太陽光や風力を導入しようとしまいと、系統で必要な火力発電所容量は変わらず、導入分は外部コストになる。

 そんな彼我の違いを無視して「欧州では……」と、都合のいい数字を拾うのは、公正さに欠けるだろう。 次に、「脱原子力発電」と“環境派”が喧伝するスウェーデンを見よう。1980年、国民投票で2010年までに原子力発電所を全廃する、いわゆる脱原子力法を定めた。「代替エネルギーが確保できれば」という条件つきである。

 06年の電源構成比は、原子力46%、水力44%でほぼ半々。風力が1%、その他(石炭、石油、ガス、バイオマス)9%である。再生可能エネルギーでは原子力の代替になりえないという認識は、議員から一般市民まで共通しており、「脱原子力法? あれは政治的なもので、現実に原子力をやめるなんてだれも考えていませんよ」と、笑われるのもしばしばだ。実際、昨年2月に脱原子力法を改め、原子力発電所のリプレースなどを認める方針を明らかにした。

 もちろん、風力の導入にとりくむ地域もある。スウェーデン南部に位置する人口6万の港町カルマールでは、周辺6市町村と協力して、カルマール海峡に洋上風力発電基地を設けた。岸から12・5㌔メートル沖合に7基(02年当時)あり、一般家庭約6000世帯分を発電するという。


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