ルポ・少年院の子どもたち

2016年11月1日

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「僕は詐欺でこういう高齢者からお金を騙し取っていた」

 こうした更生保護女性会のサポートについて市原学園はどう見ているのだろうか。

 法務教官武田侑紀専門官はこう話す。

 「納涼会のような日ですと少年たちと1~2時間くらい接するのですが、頑張ってるねとか、一生懸命頑張るんだよ、と涙を流しながら声を掛けている方もおられます。非行少年ではなく、ひとりの人間として、ひとりの少年として関わってくれる方たちです」

 「彼らにしても話し掛けてくれて、泣いてくれる人がいたことが凄く嬉しくて日記にもそのことが書かれていたりします。彼らにとっては大切な存在なんじゃないかと思います」

 『市原学園 365日・24時間体制で臨む法務教官の役割とは』でも触れたが、市原学園では近年は道路交通法違反や傷害よりも振り込め詐欺のような特殊詐欺による在院生が急増している。その被害者の多くは高齢者である。

 ある少年は、盆踊りの指導に来ていた高齢の更生保護女性会のメンバーに会ったあとに、

 「僕は詐欺でこういう高齢者からお金を騙し取っていた。もしかしたら、この人の隣近所にも被害者がいるかもしれないなのに、ここに来てくれている。自分はなんてことをしてきたんだ……」

 と普段は決してそんな反応を見せないのに、実際に高齢の外部講師に接したことによって感情移入をして、罪悪感を覚えはじめる少年たちがいると武田教官は言う。

 「特殊詐欺系は被害者が見えないことが多い。だから悪いことをしていることはわかっていても、実際に被害者に近い年齢の講師が来てくれることによって感じるものがあるんです。これは外部の講師の影響力です。目の前にいるからこそ理解できるし、イメージしやすいんです。そこに気づければ、その後の反応が変わってきます」

 「我々から見たらまだまだ甘いなんてことも、更生保護女性会の方たちは、少しの変化を見つけて、『上手くなったね』と声を掛けているんです。そんな女性らしい優しさや柔らかさが彼らには必要なのかもしれませんね」

 「今回の納涼会に限らず、外部の講師たちとの交流を通して、いろいろなことを気づかせることができると思っています」

 市原地区の川口会長や相川さんは正義を振りかざすような気負いもなくこう語る。

 「高齢者施設でお年寄りに会うのも、市原学園に来て少年たちに会うのも基本的には何も変わりません。社会を明るくしたい一心で来ています」

 「私たちは地域のボランティア団体です。各支部にはいろいろなメンバーがいますが、みんなの根底にあるのは地域に貢献したいという思いと、温かい気持ちで和を持ってやっていきましょうという気持ちです。楽しくなければ続けられません。なにか問題があるとすれば会員の高齢化ですね」

***『社会を明るくする運動』とは***
『社会を明るくする運動』~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~はすべての国民が、犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪のない地域社会を築こうとする全国的な運動で2016年で66回目を迎えています。(法務省のHPより一部引用)
政府が取り組んでいる『社会を明るくする運動』についてはこちらをご確認ください。
http://www.moj.go.jp/hogo1/kouseihogoshinkou/hogo_hogo06.html

 

  
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