安ホテルでシリア人難民家族といっしょになる
2週間後、サンドニ駅近くの安宿に泊まった。宿の主人は子供の頃親といっしょにヨットで日本に立ち寄ったことがあるフランス人で、「あなたのようにこの街の社会問題を考えている客は初めてだよ」と感激したのか、それとも日本人難民とでも思ったのか、一泊半額の13ユーロに負けてくれた。超安い。
「サンドニはフランスの未来を暗示しているよ。ここには37カ国の人間がいる。自国の人間がいるから、集まってくるんだよ。ここには可能性がある。でも、フランス人はわからない。フランス人は身分や所得に差があれば話もしないから。フランスの未来は不透明だ」
格安なのに長期滞在用の部屋には、シャワーがあり、冷蔵庫、湯沸し、電気ヒーター、食器までそろっている。ただしエアコンはなく、扇風機だけでは7月末の夏の暑さは耐え難い。
ホテルの外へ出ると、ひさしの作る影でシリア人たちがたむろしている。5家族が宿泊しているのだ。地中海沖のアサド政権の拠点ラタキア、反体制派の拠点の一つイドリブ、破壊つくされたホムスなどから逃れたフランス語を話す人々だった。ホテルの主人はいう。
「彼らは午前4時までホテルの前でだべっているんだよ。一昨日には結婚式で大騒ぎさ。通りで、ほら、あれ、ワッ、ワッ、ワッ って叫んで、夜中の12時ころに戻ってきたよ。習慣とか違って迷惑だけど、戦争で追い出された人たちだから、ぼくは受け入れているんだ」
ホテルの掃除夫は、60代のスリランカと30代後半のウガンダからきている男だった。彼らは私を見ながらで悪ふざけをする。
スリランカ「こいつはすげぇ、金持ちなんだよ」
ウガンダ「あほ、金があったら、こんなとこにいるもんけ。おめぇこそ、金持っているだろう」
スリランカ「おれはこの街に35年もいるんだぞ、ばかこけ!」