2024年12月22日(日)

From LA

2016年11月11日

 AIは自動運転に欠かすことの出来ない要素だが、それだけではなく航空機、宇宙ロケット、そして日々の交通機関にも大きな変化をもたらすと予測されている。

 AIワールド・コンベンションでは、自動車、交通産業の未来へのAIの影響についてのパネルディスカッションが行われた。パネリストはエアバス・ベンチャーの投資パートナー、マリアナ・センコ氏、現在は自動車メーカーと自動運転に必要なシステム開発にたずさわるNVIDIA社の自動車部門上級部長ダニー・シャピロ氏、18カ月前にスタートしたばかりのベンチャーながら急速に業績を伸ばすNauto 社の創設者フレッド・スー氏の3名。

 まず、航空機会社というイメージが強いエアバスだが、実際には航空機部門の他ヘリコプター、そして航空宇宙産業の3つの部門を持つ。そのエアバスのベンチャー部門では米シリコンバレーに1億5000万ドルの資金を持ち、将来が有望なベンチャー企業への投資をおこなっている。

 NVIDIA社はゲーミングにGPU(グラフィックス プロセッシング ユニット=画像処理)を導入、その後スパコンを使って車関係のビジネスに乗り出した。現在ではフロントカメラ、レーダーなどからのデータを集約し、自動運転に役立てるシステムを構築し、自動車メーカーやサプライヤーと協力関係にある。

 Nauto社はダッシュボードカメラのメーカーで、タクシー、トラックなどの商業ドライバーの行動をモニター、安全性を高めると共に事故が起きた際のドライブレコードなどのサービスを提供。同社ではカメラから得られた映像にAIをミックスして「ドライバーが不注意、危険運転をしている」と判断した場合に警告音を鳴らすなどの安全対策が多くの企業から評価されている。

 司会者から現在急速に自動運転への試みが進み、11月に入るとUberが「1人乗りのEVによる都市型コミューター(自動運転)」「エアタクシー」という2つの提案を行ったことに関し、「今後3年間で交通はどのように変化すると思うか」という質問がされた。

自動運転の行方

 シャピロ氏の答えは「3年後にはすべての市販車がなんらかの自動運転システムを備えているだろう。ボルボはすでにドライブ・ミーと名付けた100台の自動運転車両の顧客への貸出を中国などで2017年から開始すると発表した。自動運転システムにより道路は非常に安全になる」というものだった。

 しかし、センコ氏は「自動運転の定義すらまだ各国政府により異なっているのが現状で、完全な自動運転車両が販売、実用化されるのはもっと先になる。それよりもドローンによる宅配サービスなど、地上の交通規制のない空の方が自動運転化は先になるのでは。エアタクシーが実用化になるかもしれない」と回答。

 スー氏もやはり「自動運転の車を集積したデータにより現在よりさらにスマートにする、という段階が必要となる。また政府による認可も事故はドライバーの責任なのかメーカーの責任なのか、という点を含めて確定するまでに時間がかかるだろう」との意見だった。

 自動運転車両の実現は自動車メーカーに大きな影響を与えるが、保険会社への影響も大きい。ドライバーの走行距離とクルマ自身の走行距離に差が生じることも想定される。ヒトが運転した距離とクルマが自動運転を行った距離を分けて保険料請求を行うのか、など課題は多い。

 もちろん自動運転が導入されても「自分で運転したい」と考える人は一定数存在するはずだから、そのようなドライバーには高額の保険料を課す、という考え方も生まれるかもしれない。なぜなら自動運転が導入されるなら、100%自動運転になった方が道路の安全性は格段に増す。

 ただしスー氏とシャピロ氏は「ヒトからクルマへの運転主導権の移転」にはゲーミングのシミュレーションの適用が有効だ、という点で意見が一致する。完全自動運転はまず大学キャンパス内(米国では大学が広大なため、学生の移動のために学内バスが運営されているところが多い)などで実用化になるのでは、という見方だ。


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