2024年4月20日(土)

坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2016年11月24日

 新入社員だった電通の女性社員が過労死した。非常に心が痛んだが、私も若かりし頃に3回(25歳、28歳、33歳)倒れて入院した経験がある。

 新卒で入社したテキサス・インスツルメンツ(TI)では、倉庫番を経て25歳で課長に、29歳で部長に昇進した。今でも最年少記録だと思うが、週に1回は徹夜し、月に200時間ほどの残業をすることもざらであった。

 倒れた理由を振り返ると、肉体的より精神的な要因の可能性が高い。月に100時間残業していたとしても、その「中身」が重要だ。経験上、意味のある仕事をしている時間というのは意外と気にならないが、必要のない資料を作成している時間などは苦痛でしかない。

 「とりあえずテープ起こししておいて」、「一応資料つくっておいて」といった結果的に無駄になる可能性が高い作業は精神的にこたえる。今回の報道をみると、長時間労働ばかりに光があたっているが、その「中身」にもう少し注目すべきだと感じている。

 私はTIのあとは、神戸製鋼を経てNECと日立製作所の半導体部門が合併してできたエルピーダメモリで働いたが、日本企業はこういう無駄な労働時間が多い。

 エルピーダメモリのCEO着任後、無駄な労働時間の削減に着手した。社員が週に一度、週報と呼ばれるレポートを提出していたが、不文律で20ページほど書くと決まっていた。こんなに多いと書き手だけでなく読み手も大変で、ほとんど誰も読まない事態に陥っていたため、1枚以内にまとめるよう指示した。


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