2024年12月22日(日)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2016年11月30日

「WILL」「CAN」「MUST」から彼女の挑戦は始まった

 2015年7月末付でリクルート社を退職、8月初旬、ルワンダへ。過去の思いをリッセットできたのに違いないようだ。そして、ルワンダで息子と生活することに。ところが具体的には自分はこの国で何をしたい? 何ができる? 何をすべき? が決まってはいない。就職活動で重要なバランスは「WILL」「CAN」「MUST」である。流石に彼女はリクルート社のDNAがまとわりついていた。ところが自分のことになるとさっぱり答えが見つからない。じゃあ、何かやりながら見つけてこう。と考えた。まずは(息子食わせにゃならんし。)と母親の強さも加味された。

お店の外観
 

 そこで原点に戻って初めてルワンダを旅行したときのことを思い出して発想を働かすことにした。

 (ルワンダには生活物資も少ないしサービスもなかったなぁ)⇒(初期投資を考えると製造業よりはサービス業かなぁ? お金もないし)⇒(観光業ってゴリラ頼みだったなぁ)⇒(やっぱり手近なのはレストランかなぁ)⇒(でもルワンダには食文化のバリエーションなかったなぁ)⇒(でも購買力あるのって今のところ外国人つまり欧米人かなぁ)⇒(欧米人ってタイ料理好きだけどキガリにはタイ料理店はなかったよね!?)

 ちょっと待って、これじゃない!? てな調子でアッサリ直感で方針を決めてしまった。最後のステップだけ飛躍している気もしたが愚図愚図考えるよりマシかな、といった感じでした。そう、まずは始めることが大事!

ところが世の中そんなに上手く行くはずもない

 WHOで働く方に伺ったお話しだと、ルワンダの3人に1人の子どもが慢性栄養失調。たとえば芋は畑でどっさりとれるけれども、それだけ食べていても栄養素が十分ではないはずだ。発育不良になったり、脳の成長が遅れたり。ましてや食育教育の基礎はないはず。またお肉が食べられるのも富裕層に限られ、一個約0.1ドルの卵は高級品なため、低所得層は「自分で食べるものではなく、お金に変えるもの」という意識があるそうだ。

 ルワンダ人相手にはタイ料理は高すぎて無理。お客様になるにはまだ時間がかかると感じた。ちなみに彼女はここに来るまで、アフリカの食糧事情といって思い浮かべる、とある一枚の有名な写真があった(ケビン・カーター氏によって撮影された『ハゲワシと少女』で知られる写真。(http://rarehistoricalphotos.com/vulture-little-girl/)。その「アフリカ」のイメージはルワンダに来て覆ったものの、まだまだマーケットは小さい。

 そこで西洋人の滞在者や旅行者がターゲットに。でも?? 上手く行くのか? そんな調子で店をオープンしてルワンダ人を雇って「ASIAN KITCHEN」という店を始めた。ところが、内装工事、従業員の教育、作業手順、店の運営、原料調達、何から何まで自分でやるしかない事に気がついた。文化も違えば考え方もスピード感もすべてが違うのである。

 一番最悪なことは店の料理はルワンダ人の口に合わないので従業員はいっさい見向きもしてくれないことだった。ところが数カ月ほど経ってから、とある従業員からアジキチのメニューを、社割で買いたいといってきた。

 あら嬉しい。社員はタイカレー嫌いって言ってたのに。これが千紗さんにとっての「ルワンダの奇跡」が起こった瞬間だった!


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