日本の男に女の夢と意地が分かるか?
ルワンダに勝負をかけた彼女の特徴は、前回の山田美緒さんと同様に好奇心が強いことだが僕に言わせれば何も生活の場にアフリカを選ばなくても欧米や東南アジアでも良さそうなものだとつい考えてしまう。第一に距離が遠いから簡単には帰国できないではないか。この点についてはなぜかと聞いても明確な答えは返ってこなかった。きっと彼女は、日本の常識からかけ離れたところから、自分自身の凝り固まった思い込みも解き放ち、再スタートできる場所、それを求めていたのだろう。帰国のしやすさなどは、全く考えもしなかったらしい。
海外青年協力隊の20代の女性隊員なら数年の限定付きで好奇心とチャレンジ精神が満たされるが三十路を過ぎた女性が虎の子の貯金を叩いてリスクに挑戦するには何か言うに言われぬ理由があるはずである。千紗さんと話していて「女が一人で生きて行くというのは大変なことだ」と思うが子供が生きる勇気を与えてくれるのだろう。
アフリカで起業するということ
ルワンダは「千の丘の国」と呼ばれている。赤道直下にありながら平均の標高は1600メートルである。だから平均の年間の気温は25度と常春の気候に恵まれている。
でも一応、乾季と雨期がある。
午後の3時から4時にかけてスコールが来る。キガリの11月から12月が雨期である。雨期と云っても通り雨が一日一回あるだけで、雨が止んだら埃っぽい街の空気がカラッと綺麗になって太陽が顔を覗かせる。その後はヒヤッとした夕暮れがやってくる。するとレストラン「KISEKI」に若い起業家が集まってくる。千紗さんもその一人だ。連れて来た子どもは、山田夫妻の子どもたちと庭を駆け回っている。
千紗さんがルワンダ移住を決めたのは「空というか風というか空気というか、そんな空気感が決め手だった」という。ルワンダ人の従業員たちも真面目で従順でちょっとウェットで内向的で自分の意見は余り言わないタイプが多い。良く考えてみると一昔前の日本人の気質によく似ているのだ。治安が良くて生活に対する違和感はない。そんなルワンダに生活していると自分が正直になれるのだ。そんな当たり前の毎日こそが日本人の起業家にとっての「ルワンダの奇跡」なのかもしれない。
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