パート1では、中国の成長目覚ましい交通インフラの話題と、レアメタルなどの鉱工業生産の不振について書いた。パート2では、個人消費の中でも大口消費である住宅投資と自動車市場とネット販売について深掘りし、「六中全会」を通じて習近平国家主席の掌握した権力と中国のエリートたちの夢についても書いてみたい。
中国で車が今年に入ってバカ売れしているのは本当か?
今年になって自動車がバカ売れしたのは、昨年10月に開始された小型車減税(排気量1.6L以下)のおかげで、販売に勢いがついたからだ。上海や西安は当然のことだが、二級都市や三級都市でも交通渋滞がひどい。中国公安部交通管理局の統計データによると2016年6月末の自動車保有台数は1億8400万台になった(動力車保有台数は2億8500万台)。14年の新車販売台数がアメリカに約700万台の差をつけて世界一になるという市場に発展した。
それでも保有台数は人口比でいえばまだまだ伸びしろがあり、今年の10月以降も駆け込み需要で自動車販売は好調を継続している。減税の期限は今年の12月末であるから、購買客が殺到しているらしい。とはいうものの、自動車が買える経済力があるのは都市部の人々で地方の農民たちにとっては自家用車は高嶺の花だ。例えば、上海などの都市生活者の世帯収入は日本円で180万円~250万円程度だから、個人で自動車を買うには借金をする必要がある。それでも2016年1-9月期の自動車販売(台数)は前年同期比13.2%と増加した。今年の7月以降には、なんと2割超の高い増加率を示している。中国自動車工業協会は、減税の延長がなければ17年は逆に販売量が激減するという危機感を表明している。中国政府は自動車消費の影響が内需景気の中折れにならないように、小型車減税の延長を検討するのではないだろうか。
中国の金持ちは住宅を何軒持っているのか?
これまで中国政府はGDPの成長を維持させるために貸出金利を6%から4.5%まで引き下げてきた。住宅購入規制を緩和させ、購入頭金の比率も引き下げた。その結果、住宅バブルが始まった。特に都市部の富裕層が投機買いに走ったのだ。先月号の山師の手帳『中国人は不幸か幸せか?』にも不動産バブルのからくりを書いたので参考にしてほしい。
ただし、来年以降の金融政策は景気重視から住宅バブルの退治に重点が移る見込みだ。インフラ整備の加速や、住宅バブルの黙認で住宅販売が急増したが、GDPの成長目標が達成できたことを踏まえて、2017年には住宅バブルの抑え込みに舵を切らざるを得ないだろう。だからといって住宅の価格が暴落すると思っている中国人はまずいない筈だ。都市部の富裕層は、住宅が多少の値崩れをしてもいずれは上がるだろうとタカを括っているのである。
一方、全国ベースで不動産投資を見てみると、今年の前半に比べて(1-3 月期は同10.7%増、4-6月期は同7.3%増)7-9 月期には同6.6%増と減速傾向が続いているようだ。ただし、都市部の不動産価格はまだ堅調で富裕層が二軒や三軒のマンションを持っているのは常識になっている。その意味では北京や上海が特別なのかもしれない。地方都市でも政府による開発地域では投資用の住宅建築がまだ増加しているのは日本人から見ると理解できない。