ベストセラーで読むアメリカ

2016年12月2日

»著者プロフィール

 I also learned how people gamed the welfare system. They'd buy two dozen-packs of soda with food stamps and then sell them at a discount for cash. They'd ring up their orders separately, buying food with food stamps, and beer,wine,and cigarettes with cash. They'd regularly go through the checkout line speaking on their cell phones. I could never understand why our lives felt like a struggle while those living off of government largesse enjoyed trinkets that I only dreamed about.

 「人々が福祉政策をいかに悪用しているかも私は知った。政府支給の食券で1ダース入りの炭酸飲料を2つ買って、それを割引価格で転売して現金を手に入れるのだ。実際に買い物するときは食券で食べ物を買い、(食券では買えない嗜好品である)ビールやワイン、タバコは現金でといった具合に、分けて支払うのだ。そういった人たちはいつも、携帯電話で話をしながらレジを通っていく。わたしには理解できなかった。わたしたちが暮らしに困っている一方で、政府から援助を受けて生きている人たちが、わたしでさえ持っていない携帯電話をなぜ使えるのか」

 そもそも、自分たちでさえ苦しい生活なのに、政府から支援を受けている人たちがなぜ、いい暮らしをしているのか。白人労働者階級が政府に抱く不信感は想像に難くない。結局、既存の政治家やエリートたちは自分たちのために、何もしてくれないのではないかとの不満につながる。先のみえない暮らしのなかにいる人々に、オバマ大統領は次のように映っていたという。

 President Obama came on the scene right as so many people in my community began to beleive that the modern American meritocracy was not built for them. We know we're not doing well. We see it every day: in the obituaries for teenage kids that conspicuously omit the cause of death(reading between the lines:overdose),in the deadbeats we watch our daughters waste their time with. Barack Obama strikes at the heart of our deepest insecurities. He is a good father while many of us aren't. He wears suits to his job while we wear overalls, if we're lucky enough to have a job at all. His wife tells us that we shouldn't be feeding our children certain foods, and we hate her for it-not because we think she's wrong but because we know she's right.

 「オバマ大統領はまさに、わたしの町の多くの人々が現代アメリカの実力主義社会は自分たちのために出来上がったわけではないと思い始めたときに登場した。わたしたちは自分たちの暮らしがうまくいっていないことをわかっている。毎日、そうした現実を目にしている。あえて死因に触れていない10代の若者の死亡記事(行間を読むと薬物の過剰摂取が死因だ)、借金まみれで時間を無駄にする若い娘たち。バラク・オバマをみると、われわれは大きな不安感を抱いてしまう。オバマはいい父親だが、自分たちはそうではない。オバマは仕事にあったスーツを着ているが、自分たちは上下つなぎの作業服だ。しかも、幸運にも職があればの話だ。大統領の妻は子供には、ある種の食べ物を与えるべきではないと言う。そういうことを言う彼女のことをわたしたちは嫌いだ。間違ったことを言っているからではなく、言っていることが正しいとわかっているからだ」

 無名の若い弁護士が書いた回想録だが、白人労働者たちの苦境と絶望、既成の政治システムに対する不信が伝わってくる。大統領選でトランプ旋風を生んだアメリカ社会の現実がみえてくる。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る