ですから、引き出しが多ければ多いほど、さまざまな体験に価値を見つけ出すことができ、経験を深め成長していくことができます。昔から読書が人を育てると言われてきたのは、本を読むことで引き出しが増えていくからですね。
逆に、この引き出しが少なければ、ぴったりくる体験に出会えることも少なくなりますから、体験はしているけれど引き出しはなかなか開かないということになってしまいます。学ぶチャンスがなかなかやってきません。
子どもにいろいろな体験をさせてあげているはずなのに、何かを感じ取ってくれている気がしない、記憶に残っていないということが起きるのは、それらの体験にぴったりの引き出しを、お子さんがまだ持っていなかったからです。
ではどうすればいいのか?
ここで「声かけ」の登場です。
子どもの中に引き出しがないのなら、親が引き出しの代わりを務めればいいのです。
具体的には、体験といっしょに、その価値を言葉にして渡してあげるのです。
声かけで経験値を増やす
ご飯をもぐもぐ噛んでいる時に
「だんだん甘くなってきたでしょ?不思議だね」と、糖化の作用に興味を持たせる。
冬の晴れた日に外に出て、体がぶるっと震えた時に
「空が真っ青に晴れている日は冷えるのかな」と、放射冷却を実感させる。
海岸で見渡す限りの海を前に
「この開放感、気持ちいいね」と、今の気持ちを言葉にしてあげる。
学校での出来事を話してくれている時に
「〇〇君も仲間に入りたかったのかもしれないね」と、なぜか急に怒り出して他の子を戸惑わせたお友達の、心の内を想像してみる。
といった具合です。子どもが感じるままに任せていたら出会えなかった、意味や価値を声かけしてあげ、経験値を増やしてあげるのです。
念のための注意ですが、これはあくまでも一例にすぎません。同じようなシーンでは皆さんにも同じような声かけをして欲しいということではありません。ご飯をもぐもぐしている時に、「リスになった気分だね」と声かけする方がうちの子の関心を引き出しやすい、と感じる親御さんだっているはずです。
自分に合ったやり方で大丈夫です。それこそ、自分の中にない引き出しは開けられませんからね。