2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月23日

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の11月22日付社説が、ロシアのカリーニングラードへのミサイル配備計画はプーチンのトランプに対するテストであるとして、ポーランドへのSM-3ミサイル配備がプーチンに正しいメッセージを送ることになる、と言っています。社説の要旨は次の通りです。

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 11月21日、ロシア議会の幹部が、短距離弾道ミサイルと新型防空システムをカリーニングラード(ポーランドとリトアニアの間にある飛び地)に配備すると発表した。これは、トランプの最高司令官としての気概を試そうとする、プーチンの最初のテストと考えるべきである。

 プーチンは同日のインタビューで、「我々はNATO拡大に対し、対抗措置をとらねばならない。我々に脅威を与える施設に我々のミサイルの照準を当てる」と言っている。これらのミサイルシステムは、射程距離300マイルの核弾頭を搭載できる移動式のイスカンデル、最新のステルス機以外は撃ち落とすことのできるS-400地対空ミサイルを含む。これらのミサイルが標的としていると思われるのは、米の弾道ミサイル迎撃システムSM-3進化版の拠点である。SM-3は、イスカンデルと異なり攻撃目的を持っていない。

 オバマが2009年に対露リセットの一環として、ポーランドとチェコへの弾道ミサイル迎撃システムを配備するとのブッシュ政権の計画を撤回したことを、我々は思い出すべきである。クレムリンは、強硬な反対によりオバマから譲歩を勝ち取ることに成功した。ロシアの独裁者は、トランプにも同じやり方が通用するかどうか賭けに出ているのかもしれない。

 しかし、オバマがSM-3配備計画を推進した理由の一つは、中東欧における長年にわたるロシアの軍事的挑発である。これは、1987年の中距離核戦力全廃条約違反、欧州諸国への核攻撃の脅迫、欧州領空付近における爆撃機の挑発的な飛行、ウクライナ侵略、1992年の欧州通常戦力条約からの脱退を含む。

 プーチンは挑発的に振る舞い、それに対する反応に「挑発的」と不平を言う、古いソ連式のゲームをやっている。ポーランドなどのNATO同盟国が懸念するのは当然である。ワルシャワはイスカンデル・ミサイルの射程内にある。

 トランプは、ロシアとのリセットを望んでいることを示唆している。それは結構な目標だが、オバマのように先に譲歩をするのではなく、力を通じた平和という実証済みの方法を通じて追求すべきである。ポーランドへのSM-3の配備完了は、プーチンに正しいメッセージを送ることになろう。

出典:‘From Moscow, With Provocation’(Wall Street Journal, November 22, 2016)
http://www.wsj.com/articles/from-moscow-with-provocation-1479859455


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