前向きに読み解く経済の裏側

2017年1月9日

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リスクというより、予想に近いのが、米国のインフレ懸念

 トランプ次期米国大統領の政策は、未だ全貌が見えて来ないものの、米国内の雇用を増やす政策が採られることは確かなようです。財政政策で景気を浮揚させれば、物価には上昇圧力がかかるでしょう。

 移民の流入を阻止したり、違法な移民を強制送還したりすれば、現在移民が従事している低賃金労働の従事者が不足し、人件費が上がることでインフレ圧力を強めることになるでしょう。もしかすると、ボトルネックが生じるかもしれません。イメージとしては、清掃要員が大幅に不足して、営業停止に追い込まれるホテルが続出し、営業しているホテルの宿泊料が需要と供給の関係から高騰する、といった感じです。

 中国からの輸入品に高額関税を課す、といった保護貿易主義が採られるとすると、これも米国経済のインフレ要因になります。中国製品よりも高い他国製品に輸入先がシフトするかもしれず、米国国内での生産にシフトするかもしれませんが、いずれにしても中国製品よりは高く付くでしょう。国内生産の場合には、米国内の労働力需給を逼迫させて賃金を上昇させ、「賃金コストの転嫁によるインフレ」を引き起こす可能性もあるでしょう。

 米国がインフレになる(あるいはインフレ懸念が高まる)と、日本経済にはいかなる影響が出るのでしょうか? 理論的には購買力平価説に基づき、物価の上がる国の通貨は安くなる(ドル安円高になる)とも言えそうですが、実際には「米国のインフレ懸念が高まるとFRBが利上げをするであろうから、日米金利差が拡大してドル高円安になるだろう」という金融市場の思惑からドル高円安となり、日本の景気にとってはリスクというより追い風となる可能性もあります。米国の利上げによって資金が引き上げられて困る途上国も多いでしょうが、日本の場合には資金が米国に流れることは困ったこととは言えないでしょう。むしろ、景気の予想屋にとっては経済予測以上に景気が良くなってしまう「上振れリスク」なのかもしれません。

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