「もう一つの真実」作り
もう一つの真実とは、「虚偽」「うそ」「偽り」です。トランプ大統領は、自分にとって不都合な真実に対して、もう一つの真実を作って反論します。その根底には、同大統領の自己愛的パーソナリティが存在しています。自己愛的パーソナリティの特徴には、「自尊心を傷つけられると攻撃的になる」「自分に対する批判に対して過剰反応を起こし対決姿勢を取る」「自分の意見を押し通す」等があります。
例を挙げてみましょう。ヒラリー・クリントン元国務長官は総得票数で、約290万票トランプ大統領を上回ったと米メディアが報道しました。それを聞いた同大統領は、即座に300万から500万人の不正投票があったと力説して「もう一つの真実」を作るのです。
さらに別の例を挙げてみます。米メディアは2009年オバマ前大統領就任式の参加者が約180万人であったのに対して、2017年トランプ大統領就任式のそれは25万人から50万人程度であったと報じたのです。透かさずトランプ大統領は、観衆の人数に関して「文句なく過去最高であった」と主張して「もう一つの真実」を作り反撃に出ました。
「もう一つの真実」は、ツイッターを通じて主としてトランプ信者に拡散し浸透していきます。既存メディアに対する不信感が強く事実関係を吟味しないトランプ信者は、「もう一つの真実」を真実として認識していくのです。その結果、彼らには既存メディアが発信する真実は意味を持たないのです。トランプ大統領は、このメカニズムを完成させました。
トランプループ、ツイッター、トランプ劇場型政治及び「もう一つの真実」で人を動かすトランプ大統領の手法は、危険極まりないと言っても決して過言ではありません。
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