2024年11月22日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2010年5月7日

 しかし、中国の高成長や高水準の所得の伸びがいつまでも続くわけではない。中国の少子高齢化が進むことなどから見れば、数年後からは経済成長率の鈍化も見込まれる。そのときに至っても、中国政府が大規模な財政支出を続け、個人が土地神話に固執しつづければ、正に80年代後半の日本と酷似し、大きな後遺症を残すバブル崩壊の可能性は高まる。

むしろ70年頃の日本と重なる

 現在の中国経済は、世界第2位となるGDP規模、一人当たりGDP水準や経済成長率など、多くの面で1970年前後の日本経済と重なって見える。しかも、当時の日本では列島改造論に沸き、不動産価格は上昇していた。

 このような状況を見ると、現在の中国の不動産市場の動向は80年代後半の日本というよりも70年頃の日本に近いように見える。しかも、70年代初めの日本では、その後石油ショックが好景気を一気に冷やし、不動産価格は落ち込んだものの、その度合いは限定的で、調整期間もそう長くはなかった。ここも、当面の中国の経済と不動産市場を巡る状況を示すように見える。

 しかし、日本では、その10年余り後に不動産バブルが待っていた。今後10年ないしそれ以上先のところまで日本経済の推移が中国経済と不動産市場の帰趨に重なるかは、到底見通せず、不明としか言えない。もっとも、経済のバランスを失した形で経済政策や住宅価格が推移すれば、やがて「失われた10年」にもつながる大きな不動産バブルがあると見ることはできる。

 しかも、70年頃の日本と違って、いまの中国には海外から巨額の投機的資金が流入している危うさもある。けっして良い見本ではないが、日本の経験は長期的にも中国経済や不動産市場の展開に大いに参考になるように見える。

 

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