そうした経緯を聞くと、今年こそ復活してほしい、1勝でもいい、いや、1回を0点で抑えるだけでもいいから、松坂らしい投球を見せてほしい、と思わないではいられない。松坂がボストン・レッドソックスの主力投手だった2008年、私はフェンウェイパークのネット裏で松坂の投球を見た。彼がメジャーリーグで自己最多の18勝をマークしたこの年、16勝目を挙げたシカゴ・ホワイトソックス戦を、松坂の招待席で見せてもらったのだ。あのとき、松坂は光り輝いていた。
ソフトバンク首脳陣の分析は冷徹
しかし、ソフトバンク首脳陣の分析は冷徹だ。現に、あるコーチはこう言っている。
「いまの松坂が、去年の同じ時期に比べて、格段によくなっていることは確かです。身体は絞れているし、ある程度は球数をほうれるようにもなった。しかし、だからプロの一軍の打者を抑えられるかとなると、そうはいかないでしょう。かつての松坂は、少々コントロールがアバウトでも、えいやっと投げれば球威で抑えることができた。しかし、いまの松坂の球にかつてのような力はない。相手を打ち取るには、まず球を低めに集めて、丁寧にピッチングを組み立てることが必要です。つまり、いまの松坂は、かつての自分を捨てなきゃいけないんだ。全盛期に〝力任せ〟の投球でやってきた松坂にそれができるのか、復活できるかどうかはそこにかかっている」
それ以前に、今年優勝奪回を目指すソフトバンク投手陣の層はとてつもなく厚い。いまの松坂に、この窮地を突破する〝怪物力〟が残っているのか。オープン戦の期間中、しばらく松坂の背中を見つめていきたい。
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