2月に宮崎に滞在していると、プロ野球やJリーグのキャンプはいまや単なるスポーツの練習にとどまらず、複合的ビジネス・イベントと化していることを実感する。キャンプ期間中に集まるファンを対象に、地元の企業や自治体は名産品や観光スポットをこれでもかとアピール。各球団がサイン会や写真撮影会を企画してファン層の拡大に努める一方、試合の中継権を持つCS放送局まで契約世帯数を増やそうと躍起になっているのだ。
例えば巨人では、読売系列の日本テレビがサンマリンスタジアムの駐車場に巨大なモニターを設置。連日、CS日テレG+(ジータス)で放送しているキャンプ生中継の映像を映している。たかが練習とはいえ、中継アナウンサーの実況に加え、高橋尚成、水野雄仁氏ら有名な巨人OBの評論家の解説付きだ。このライブ映像を宣伝材料にして、モニターの前に集まるファンに「G+と契約して巨人を応援しよう」と呼びかけているわけだ。この狙いについて、日本テレビ関係者がこう語る。
「今年のキャンプは毎日G+で4時間生中継しています。深夜の再放送も含めて、1日に2回放送している。毎年やっている企画ですが、同じ生中継でも去年は3時間、一昨年は2時間半だった。今年は大がかりな戦力補強もあって何かと話題も多いから、思い切って4時間ぶっ通しで放送することにしました」
キャンプでそこまでやる必要があるのかと聞くと、この関係者はこう強調した。
「あるんですよ。CS放送でプロ野球を見るファンは、レギュラーシーズンが終了する10月いっぱいで契約をやめちゃう。その年の11月から翌年のシーズンが開幕する3月まで、5カ月間もゴッソリ顧客がいなくなるんです。この顧客を3月よりももっと早く、2月から引き戻せないか。そのためにはキャンプを生中継することが一番効果的です。他球団だって同じことをやってるんだから」
そう言われて広島の日南キャンプに行ってみると、確かにこちらでも同じCSのJスポーツが生中継をやっていた。ちなみに、解説は広島OBの金石昭人氏。ソフトバンクではどうかと思ったら、ここもアメリカから乗り込んできたFOXスポーツがバックネット裏に放送席を構えている。どちらも球場前にモニターとパンフレットを置いて、日テレ同様、ファンに向かって「この機会に一度契約してみませんか?」と呼びかけていた。
そうしたCS放送のブースや球団グッズのショップの傍らでは名産品や名物料理の店が軒を並べ、「いらっしゃい、いらっしゃい!」とやっている。飲食店や観光スポットを紹介した無料のガイドブックも常備して、これには店のクーポン券やタクシーの割引チケットまで付いているという念の入れようだ。