トランプループ「安心」の段階
第3に、トランプ大統領は安倍首相を厚遇し、「ノー」と言わせない環境を作るためです。同大統領は、選挙期間中から在日米軍駐留経費の増額及び貿易不均衡の是正を求め、日本の為替政策に対しては口先介入をしてきました。さらに、ツイッターを使ってトヨタ自動車を標的にしてメキシコに工場を新設しないか、それとも高い関税を支払うのかの二者択一を迫りました。ところが、今回の日米首脳会談では安全保障及び経済に関して日本に対する痛烈な批判はありませんでした。トランプ大統領の日本に対するアプローチは、メキシコに対するそれと類似したところがあります。
周知の通り、トランプ大統領は国境の壁を建設して、メキシコ政府にその費用の全額を支払うように要求しました。その後、ペニャニエト大統領との会談はキャンセルになりましたが、電話会談を行って対話を継続していくことを確認しました。これがトランプループの罠です。
無理難題を交渉相手に押し付け、いらいらせるのですが、その後で一旦相手を「安心」させます。「トランプの電話に隠された意図」で説明しましたトランプループの「安心」の段階に日本は入っているとみてよいでしょう。この段階を経ると、トランプ大統領から本格的に要求が出てきて、日本はそれに翻弄され、外交の主導権を完全に握られていきます。