●宇宙への興味はいつからなんですか?
−−小学生の頃、一番印象に残っているのは、「アポロ11号」の月着陸でした。生中継を見ていて、月に行きたいと思ったというよりは、ものすごくギャップがあるなと感じました。月の風景が非常に殺風景に見えた。子どもだったから、月にはもう少しおもしろい風景が広がっていると思っていたんでしょうね。人が住めるような感じはまったくせず、全然違う世界なんだなという印象を持ちました。着陸が意識にはすごく残っていたと思いますよ。いま月の研究をやっているのと、どこかでつながっている気はします。
●大学院の後、すぐアリゾナ大学の月惑星研究所に行かれたんですね。
(写真:NASA)
−−修士の頃、やってることがおもしろくなってきて、研究者の道を歩んでいこうという気になって、博士課程を終えたときに、一度惑星科学の本場に行こうと思いました。博士論文で、できたばかりの地球で大気が逃げるときにどういったことがおきるかという研究をしたんですが、たまたま、アメリカで私を受け入れてくれた研究者が同じ研究をやっていたんです。この人が学会で私の仕事を紹介してくれたのを機に、アメリカに行きました。ちゃんと評価して紹介してくれたのがうれしかった。これが28歳のとき。
アメリカにいたときに、日本から学会に出てきた宇宙科学研究所の鶴田浩一郎先生が、日本でも火星探査をやりたい、と仰っていたのは印象に残っています。
その後日本に戻って1年少したったときに、火星探査たちあげの話が出て、そこに何度か呼んでもらったんです。探査の方向性が見えてきたときに、それだったらダスト計測器を積めばおもしろいんじゃないか、と提案しました。
●「ダスト」は、先生の研究のキーワードの1つですね。
ダストというのは宇宙空間の塵です。火星のフォボス・ダイモスという衛星が塵をまきちらす可能性について、アメリカの研究者が研究していたのが気になっていた。火星にいくならそれを計ればおもしろいんじゃないか、と提案しました。1990年に打ち上げた探査機「ひてん」にドイツ製のダスト計測器を積んだ話も知っていたので、同じ物を火星探査に積めばいいだろうと思ったんです。
私が日本側の責任者としてドイツ製のダスト計測器を火星探査機「のぞみ」に積む仕事をやることになりました。