2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月11日

 シリア情勢の現状についての良い分析です。特に、いまシリアでは優位にあると言われるアサド政権、ロシア、イランが抱えているジレンマをよく描写しています。

 反政府勢力は軍事的には押され気味ですが、アサド政権も、シリア全土の支配からはほど遠いです。ロシア、イランも、アサド政権にシリア全土の支配を実現させるまで支援する意思と能力があるのか、疑問です。

 シリアはスンニ派が多数の国であり、アラワイト派を基盤とするアサド政権は、スンニ派、キリスト教徒など、各勢力の微妙な均衡の上に成り立っていた政権です。今回のシリア内戦で、その脆弱性がますます明らかになっているのではないかと思われます。

 シリアで争っている各勢力が、戦いに疲れ、シリア紛争に軍事的解決はないとの認識を持つに至れば、真剣な話し合いにつながるでしょう。そして、国連主催の会合あるいはその他の場で、シリア国家の解体にも匹敵するような地方に大きな権限を持たせた連邦制にするなどといったことで、基本的に合意するしかないのではないかと思われます。ただ、いまのところ、そういう見通しもなかなか立っていません。

 オバマ政権はトランプ政権よりはずっとしっかりとした外交をしたように思いますが、このシリアの現状は、オバマが自らレッドラインと宣言したシリアによる化学兵器使用がなされた時に、きちんと対応しなかったなど、オバマ政権の失敗の結果である面が大きいと言わざるを得ません。

  
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