2022年8月10日(水)

家電口論

2017年6月5日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

口込みによる浸透

 シャープによると、ロボホンの販売台数は1年経っても拡大傾向にあるという。

 単純にオーナーの数が起因だと推定される。体験しないと分からないものは、店頭で見た位では分からない。ロボホンの場合、オーナー(ユーザー)が持って歩いて、教えてくれるのだ。

 私は、1980年代のアップル社のパソコン、マッキントッシュが、ユーザーの口込みにより拡がったのを思い出した。私の親友にもマックに染まった奴がいて、1984年にバイト代をつぎ込み買った。これ幸いと、いろいろ触らせてもらうと、なるほど大学にあるNECのPC98(OS:MS-DOS)とは違う。GUI(グラフィカルユーザインタフェース)は理解していた積もりだが、体感は別次元だった。楽しいのだ。

 ロボホンは頭ではなく、感情レベルで納得してもらうことが重要なのだ。

 マスメディアは、限られた紙面、時間の中に、情報を入れ込むため、この様に完全に新しいニュアンスが詰まったモノには余り役に立たない。逆に体験者が話をすると、納得しやすい。これは「新しい世界を担う」モノの特長だ。コミュニケーション・ロボットは、まだカオス状態で説明し難い、一方的な説明では用をなさない。だからこそ、多様の見方で伝える「口込み」が重要なのだ。

プロトタイプが物語ること

 イベントの開発秘話のコーナーで、ロボホンのプロトタイプが回覧された。(写真は掲載は不可)。面白かったのは、色。黒電話をイメージしたとのことで、目も口もわからないくらい真っ黒。これは笑った。また電話を強調するために、足の裏にはプッシュボタンが付いていたのも面白かった。

 が、興味深いかったのは「サイズ」だ。 ロボホンは、電話の受話器と同じサイズ……といっても分からない人が多いだろうから、卑近な例を出すと、キャップ部分をなくしたペットボトルとほぼ同じサイズだ。これは実に携帯しやすいサイズなのだが、このサイズでバランスが取れたロボットにするのは至難の業なのである。

 なんせ動きを司るモーターは総計13個。それだけ小型モーター、しかもトルクが大きく、細かなゴー、ストップに耐えられるサーボモーターを用意するには技術難易度が非常に高い。

 いい技術屋か、どうかはここで分かれる。悪い技術屋だと、できないことを理由に設計を変えることを要求する。つまり大きくするのだ。そうするとモノは出来るかも知れないが、コンセプトと変わってしまう場合がよくある。ロボホンの場合は「携帯性」「電話性能」に難が出るわけだ。

 ここで耐えて、モノにしたシャープの技術陣は立派なもの。それだけではない。ロボホンは人型で頭でっかち。バランスはあまり良くない。ところが、このロボットが踊るのだ。マンガ「二十世紀少年」の巨大ロボットは二足歩行ができなかったことなどを合わせると、驚異的な設計だ。

 私がいいなぁと思うのは、コンセプト外観見本をさっさと作り上げたことだ。これは、ロボホンの父と呼ばれる東京大学先端科学技術研究センター特任准教授でロボットクリエーターの高橋智隆氏の仕事。外観見本を早い段階で作り上げるのは、プロジェクトをまとめる上で重要なことであり、成功へ導く一つの鍵だ。何度も二足歩行ロボットを作り上げた高橋氏は、独特の設計勘もあるのだろうが、何にせよ、サイズは常に重要だ。

 受けたのは、ロボホンの母と呼ばれるシャープで商品企画を務める景井美帆女史。彼女が開発チームをまとめてきたそうだ。

赤いハートスワロフスキーが付いた「お腹」のパーツ。 ロボホンはガラスのハートだったんだ

 開発秘話として、この後、いろいろな話がされるのであるが、商品企画、開発を手がけてきた人なら、コンセプトを変えることなく進めた当プロジェクトが、無理難題のオンパレードであったことは容易に予測できるだろう。それ位、ロボホンは商品としてのできがイイ。

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