東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年7月29日

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浜野保樹 (はまの・やすき)

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

1951年生まれ。工学博士。コンテンツ産業や制作に関する研究開発に従事する。主な著書に『大系 黒澤明』(講談社)『偽りの民主主義』(角川書店)『表現のビジネス』(東京大学出版会)などがある。(財)黒澤明文化振興財団理事、文化庁メディア芸術祭運営委員ほか。

 

©2010 森 絵都/「カラフル」製作委員会

 そうですね、わざと食事シーンは増やしましたね。

浜野 アニメーター泣かせ。

 ええ、まあ観てる人は多分わかんないんですけど、アニメーションで食事を描くというのはものすごくハードルが高いことなんですよ。描くのがめんどくさい。

 自然に見えるというレベルを描くのが、エラく大変なんです。そういうのを喜んでやってくれる人(アニメーター)はそんなにいないんで。

 アクションだったら、絵がどんどん流れていくんで、描いてる方も気持ちよかったりするんですけど、食事というのは、そこにあるものを動かしたり、また置いたりとか。ごはんを箸でつまんだら、茶碗の中のごはんは減らないといけないとかっていう、気が遠くなるぐらい大変な作業なんですよ。

浜野 それをあえて増やしてやったというのは、なにか意図が?

 食事のシーンを、楽しい場じゃない空間としてつくりたかったんですよね。
真という子が、おかあさんが気をつかっていろんな料理をつくってくれるんだけど、だいたい食べない。

 おかあさんと2人だけの異様な雰囲気のなかで、おかあさんのつくったおかずには手もつけずに、ごはんにふりかけだけかけて食うとかね。

 なんかそういう緊張感のある場面というのを、食卓でつくりたかったんですね。

 おかあさんが1人で泣いているところで、ほかの家族は何もいわずに黙々と食べているとかね。一種、そういう異様な空間として食卓を利用したかったんですよ。

浜野氏「こんなふうにお鍋を食べるシーンが描かれてたよね」

浜野 似た場面は『河童』でも出てきたけど、今回は、もっとディテールをきちっと描いていたよね。

 まあ、僕が描いたわけじゃないんですけど、アニメーターに描かせたのは僕だから。僕がいうのもなんですけど、よく描いてくれてたなと思いましたよ、ほんとに。

浜野 ちゃんと箸が動いていた。

 それで、そういうところを見ると原さんに対して必ず出てくる声というのは、「なんで実写でやらないの?」ということ。これには、どう答えるんですか。

なぜ実写じゃなくアニメーションなのか

 いや、それは僕もわかんないですねえ。

 「これこれこういう理由があるから僕はアニメでつくり続けるんだ」みたいな強い意見は、とくにないですよ。

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