7月中旬、わずか1週間あまりの間に、米中間の緊張が高まる可能性は劇的に増加した。不和の種は、何年も前から存在していたのである。いま問うべきは、今度の論争が満潮干潮のように予測がつく周期的なものなのか、それとも、今後何カ月も続く趨勢なのかという点だ。
菅政権は国内かかりきりだが
これほど込み入った問題が、日本にとってはよりにもよって、よくまあこんなに悪いタイミングで出現したものだ。日本は国内で分裂を続けている。菅政権はというと、日米同盟をしっかりさせるのはそっちのけ、国内問題にかかりきりだ。
そんなときもちあがった米中間の緊張は、もちろん日米関係に関わってくる。しかし本来、外交に対する日本の基本的アプローチ――とりわけ中国と北朝鮮にどう付き合うかという――に対し、モロに響いてくるものなのである。
中国と商売しているWEDGE Infinityの読者は、米中間の緊張を案じるべきだろうか? それこそ風土病かと思えるような、日本政府の弱さもこの際心配すべきだろうか?
これは問うてしかるべき疑問だろう。何しろ今、中国が10年前の世界貿易機関(WTO)加盟時の誓約を反故にしていると批判しているのは米国人だけではなく、世界中の企業がそんな中国への怒りを募らせているからだ。
政府調達の国内優遇に怒って異例の手紙
2009年の12月、日本の企業や製造業の利益団体、各種組織が、米国や世界各地の相手と一緒になって、中国政府の大臣たちに苦情を訴える極めて異例の私信を出した。書簡のテーマは、中国政府が2004年に最初に発表した「自主開発」政策の規制執行に関する当時旬な話題だった。(訳注)
やはりこの7月のこと、同じ問題について、ドイツ産業界のリーダーたちが温家宝首相をはじめとする中国政府高官に対し直々苦情を述べた。これに対する温首相の反応が、基本的に「君たちは間違っている。だいたい君らのことなど知ったことか」というものだったことは注目に値する。
日本で同書簡に署名したのは情報通信ネットワーク産業協会、ビジネス機械・情報システム産業協会、電子情報技術産業協会、日本電機工業会、中国日本商会の各代表。
中国と問題抱えるのは日本だけじゃない
これが日本人にとって不快なほど馴染みのあるセリフに聞こえたとしたら、悲しいかな、それも当然である。というのもこれは基本的に、参院選前に日本の防衛大臣が中国に核拡散問題への関与を迫り、「図々しくも」アジアを「非核化」する交渉を提案した時に、中国の外務大臣が放ったのと同じ言葉だからだ。
読者の皆さんはきっと何年も前から、論争を呼ぶ〔東シナ海の〕深海採鉱や石油・天然ガス資源の問題、第2次世界大戦に端を発する地域の領土紛争を巡って、日本政府が中国政府との間で納得のいく和解に漕ぎ着けられずにいることを認識しており、恐らくはそうした状況を懸念していることだろう。(訳注)
しかし、不首尾の責任が日本側にないのは明らかだ。もっと言うと、日本には「仲間が大勢いる」こともはっきりしている。相手が中国となると、アジア域内の日米の貿易相手国および同盟国は事実上すべて、海底資源探査や何年も続く国境問題を巡って紛争を抱えている。延々と続く一連の紛争は、解決を見ることなく、次第に激しさを増すばかりだ。