2024年11月23日(土)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年7月30日

 これに対して北朝鮮は「強力な」措置で応じると脅しをかけている。我々の情報筋によれば、よく知られた中国の反対姿勢にもかかわらず、北朝鮮は再び核爆弾の実験を想定しているようだ。

オバマ大統領は明白な意思示した

 一見したところ、黄海における「利益」を主張する中国の苦情と露骨な警告を受け、米韓両政府はひとまず、原子力空母「ジョージ・ワシントン」とその打撃部隊を黄海に送り込むことを延期したようだ。この決断は、米国の保守派と、懸念を抱くアジア地域の同盟国からの厳しい批判を呼んでいる。

 だが、我々の見るところ、クリントン長官がASEAN閣僚会議で劇的に南沙諸島に支援の手を差し伸べたことには、オバマ大統領からの明確かつ絶対的な「シグナル」を発する意図が込められていた。つまり、オバマ大統領は「中核的な利益」に関する中国のレトリックに怯むことはなく、先の軍事演習でも示したように、米国は軍事同盟国および主要貿易相手国をしっかり守り、各国と協力していくというメッセージである。

 では、我々はWEDGE Infinityの読者が米中間の軍事的な緊張の高まりを心配すべきだと言っているのか? いや、そうではない。けれど、この結論が、我々がオバマ大統領の熟慮の上の政策と見なすものに基づいていることは率直に認めよう。中国政府も北朝鮮政府も決して誤解しようのない断固たる態度の政策により、米中間だけでなく、米朝間の敵意も回避できる可能性がずっと高まるのだ。

日本はもはや「要」の国ではない?

 日米両国が沖縄普天間基地の移設問題を賢明に解決できずにいることが「絵」だとすれば、上に挙げた一連の問題はその「額縁」である。普天間移設問題は、米軍の前進部隊を沖縄あるいは本州に維持するという観点からすると、容認可能な解決策に至る現実的な公算が全くないジレンマだ。今の日本の政治情勢を見る限り、そういうことなる。

 また、悲しいかな、これはオバマ大統領がトロントで開催されたG20サミットで韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領を温かく迎え、米国にとっては、米韓同盟がアジアの「リンチピン(安全保障の要)」だという考えを全世界に向けて宣言し、多くの観測筋を驚かせた理由でもある。これは冠詞が「the」の唯一のリンチピンであり、その相手は日本ではないのである。

 我々はあるホワイトハウス高官に、オバマ大統領の言葉遣いは正確だったのか、そして熟慮されたものだったのかどうか尋ねてみた。すると、「そうだ、それがまさに大統領が話したことであり、意味していたことだ」との答えが返ってきた。

 米中間の緊張が高まっている時期に日本が果たす役割にとって、これは一体何を意味しているのか? 長く、暑い8月が迫り来る中で、じっくり考えてみるべき問題だろう。


次回は8月27日(金)を予定しております。

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