2024年4月26日(金)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年7月30日

 
 

フィリピン政府、中国海軍に憂慮深める

 WTO加盟時の江沢民体制であれば、こうした問題に対して公正かつ平和的な和解を提案したかもしれない。だが今の胡錦濤政権はそんな提案をするどころか、逆に貿易や気候変動対策での国際協調といった重要な問題で姿勢を後退させただけでなく、アジア全域でいよいよ好戦的に人民解放軍海軍を展開するようになった。

 実は、アキノ家が実権を取り戻すことになった最近のフィリピン大統領選の数週間前、今では大統領の座に就いているノイノイ・アキノ氏がワシントンに密使を送り込み、ホワイトハウス、米国務省、米国防総省の関係者との内密の会合を求めたことがあった。

 私自身、会合の設定に携わり、アキノ氏の代理人に同行したのだが、そこで出た話には、正直言って多少の驚きを禁じえなかった。アキノ氏は南沙諸島(スプラットリー諸島)で威力を誇示する中国の態度を強く懸念しているだけでなく、フィリピンおよび地域に対する中国海軍の脅威の高まりとどう対峙すべきかについて、オバマ大統領と協議の用意があるということを伝えたがっていたのである。

南シナ海を「中核的利益」と呼んだ波紋

 このような非公式かつプライベートな会談がオバマ政権の政策形成にどれほどの影響を及ぼしたのかは分からない。だが、最近ベトナムで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)閣僚会議で、ヒラリー・クリントン米国務長官が、米国は今、南沙諸島の紛争に直接的かつ積極的に関与する用意があるとする驚くべき声明を発表したことに留意するといい。

中国や台湾、マレーシア、ベトナム、フィリピンなどの国境線が複雑に絡み合う南沙諸島。
巨大な海底油田も発見され、一帯をめぐる空気は緊張している

 長官はここで、どこかの国を「支持」して正式に関与するのではなく、中国、ベトナム、フィリピン、台湾の間で平和的な解決策を模索する仲介役を買って出た。

 この話の一体どこがそんなに勇敢であり、大胆なのかと読者は思うかもしれない。であれば、中国が最近、すべての近隣国との間に抱えている問題、様々な国際資源に関する議論やシーレーンへのアクセスの問題を丸ごとひっくるめて、「中核的な利益」と呼ぶようになったことを考えてみるといい。

中核的な利益という言葉を中国が使うときその裏にあるのは、「解決するためには武力を使うことも辞さない」ということだ。米国、あるいは国連など外部機関による「介入」を、中国は一切拒むということも意味している。

北朝鮮が沈めた、と認めた中国

 「利益」について論じる中国の言葉が出たからには、我々は関心を北へ向けるべきだろう。北朝鮮をどうするかという、日米両国が共有する長年の懸念である。

 韓国の哨戒艦「天安」を魚雷で沈没させた事件について、国際社会として正式に北朝鮮を非難しようとした最近の国連の議論の場で、日本の外交官たちは国内での政府の弱さをよそに実に立派な働きをした。その結果は、「攻撃」は非難するが、北朝鮮を名指しで非難するのを避けるという中国とロシアが承認した声明であり、日本政府や米国政府、韓国政府が望んでいた決議に満たなかったのは事実だ。

 だが、最終的な結果をじっくり見てみるといい。ロシアと中国は国際的な圧力に屈し、哨戒艦が攻撃によって沈められたことを認めざるを得なかったのである。これは今でも北朝鮮が否定していることだ。だが、結局のところ、そんなことができた(あるいは、そんなことをあえてやる)国が北朝鮮以外にあるのか!

 さらに、米国と韓国は北朝鮮(そして北朝鮮の唯一の支援国である中国)に対して、北朝鮮の挑発行為は決して容認しないこと、そしてさらなる挑発には武力で応じることをはっきり示すために、空軍、海軍による合同演習を発表した。合同軍事演習は先日、日本海で実施された。


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