2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月20日

 米外交問題評議会のリチャード・ハース会長が、5月21日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、イランでのロウハニ大統領の再選にもかかわらず、サウジアラビア=イラン関係は悪化しかねない、と述べています。要旨は以下の通りです。

(iStock)

 最近、サウジのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は、イランを拡張主義で、過激な宗教思想に動かされていると非難し、間接的な紛争がより直接的なものに発展しかねないと述べた。そして戦いが行われるとすればサウジでなく、イランで行われるように図ると警告した。

 サウジはトランプ大統領を温かく歓迎したが、油価の低迷に打撃を受け、潜在、顕在の失業率が高く、腐敗と不平等が広まり、イエメンでのイランとの代理戦争は、サウジのベトナムの様相を呈してきている。国を近代化し、経済の基盤を広めようとの副皇太子の野心には、保守的な政治、社会勢力、弱い教育制度、そして王位継承争いが立ちふさがっている。

 他方、イランではロウハニ大統領が再選されたが、これでイランでは穏健派が優勢であると考えるのは、物事を単純化しすぎている。多くの政治権力は依然として支配的な保守指導者の手にある。保守指導者は国民の40%の支持を受けた。

 イランは当分の間は保守派と穏健派が共存する政治制度であり続けるであろう。またイランの拡張主義的外交政策は続くと見なければならない。それは地域のシーア派と共闘し、ヒズボラのような武装グループを使い、そして軍事力を直接投影するであろう。ロウハニは大統領選挙で従来の対外政策の変更は何ら約束しなかった。

 サウジとスンニ派の同盟国は、米国からの兵器の新規購入にもかかわらず、イランに対抗するのに四苦八苦するであろう。他方でトランプ大統領は、反イランは声高に述べているが、全面的な反イラン政策を展開するとは思えない。

 つまり、サウジ=イラン関係が好転する兆しはない。むしろ副皇太子が警告したように、関係は悪化しかねない。

出 典:Richard Haass ‘The Saudi-Iran war of words keeps the region in a fragile state’
(Financial Times, May 21, 2017)
https://www.ft.com/content/e9795334-3d6c-11e7-82b6-896b95f30f58


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