2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月15日

 トランプ大統領がロシアのラブロフ外相とキスリャク駐米大使に同盟国より提供された機密情報を伝えたことが米国で大きな問題になっています。最初に報道したワシントン・ポスト紙は、この件について「トランプは機微な情報について信用できない。今や世界がそれを知っている」との社説を5月16日付けで掲載しています。社説の概要は次の通りです。

(iStock)

 ロシアの高官にトランプ大統領が高度な機密情報を開示した件は、彼が機微な国家安全保障事項を取り扱う準備が全く出来ていないことを示している。トランプは「イスラム国」の航空機攻撃計画についての情報を先週の会談の際に、ロシアのラブロフ外相に提供した。ワシントン・ポスト紙は、この情報(外国政府から提供された)がロシア側に情報の源を特定する可能性を与えると報じた。

 大統領の不注意の影響は大きい。情報の流れを止め、現場の工作員を危険にさらすことに加えて、トランプは世界に彼が機微な情報について信頼できないことを世界に知らせてしまった。  

 CIAと機密を共有している英国からイスラエルの政府は協力のあり方を見直さざるを得ないだろう。中ロのように協力関係を持たない国は、トランプへのアクセスを情報引き出しのために利用しようとするだろう。

 漏洩を弁護するホワイトハウスは混乱している。本件についての報道が出た後、マクマスター安全保障担当補佐官は「間違っている」と否定した。しかし、その後、トランプがツイッターでロシア側に「テロと航空安全に関する事実」を提供したことを確認、「そうする権利がある」と述べた。

 トランプのロシアとの関与はすべて彼の外交に関する知識の不十分さと彼を支える部下の弱さを反映している。慢性的に不正直なラブロフと会うとの決定自体、良くない判断である。オバマは2013年以来、執務室ではラブロフと会談しなかった。

 トランプの情報開示は彼の二大欠陥、虚栄心とプーチン政権に対する鈍感さからきている。彼は子供っぽく「情報通」であることを誇ったようである。後でトランプは、ロシアが対「イスラム国」でより多くの協力をすることを希望した、と述べた。これはナイーブで危険な結論である。トランプは情報関係者の話をよく聞かない。

 大統領を外国の指導者との会談のために準備するプロセスはショックを与えるほど、細っている。国家安全保障会議と国務省の重要ポストが空席の中、経験不足の義理の息子のクシュナーが多くの準備作業をしている。

 コーカー上院議員(共和党)は5月15日、トランプ大統領は「下向きのスパイラル」に入ったと適切にも述べた。降下を止めるためには無秩序と無知を規律と有能さで置き換えるようなホワイトハウスの再構築、またトランプによる矯正行動が必要である。

出典:‘Trump can’t be trusted with sensitive information — and now the world knows’(Washington Post, May 16, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/trump-cant-be-trusted-with-sensitive-information--and-now-the-world-knows/2017/05/16/5f2a191c-3a3c-11e7-8854-21f359183e8c_story.html


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