2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月13日

 5月12日付のニューヨーク・タイムズ紙は、北朝鮮に対する経済制裁には多くの抜け穴があり、特に中国は北朝鮮と多くの取引をしているとのパーレス同紙北京支局長らの解説記事を掲載しています。記事の要旨は、以下の通りです。

(iStock)

 北朝鮮との国境沿いにある中国の町丹東にある衣料の会社は、北朝鮮に生地などの素材を送って衣料を作らせ、「メイド・イン・チャイナ」のラベルを貼らせて入手し、輸出している。偽のラベルのおかげもあり、北朝鮮の衣料産業は昨年5億ドル以上の売り上げを記録した。

 制裁の抜け穴を使っての北朝鮮の中国に対する石炭の販売は、昨年11億ドルに達した。

 海外で働いている北朝鮮労働者は40か国、5万人以上にのぼり、年に2億5千万ドルほどを国に納めている。中国は北朝鮮の貿易の80%以上を占め、2月に今年いっぱい北朝鮮からの石炭の輸入を止めると発表した。

 しかし中国は北朝鮮体制が崩壊し、大量の越境避難民が発生し、より敵対的な隣国ができることを恐れ、北朝鮮により厳しい制裁は課してこなかった。国連の制裁は、北朝鮮の軍部と指導層を対象とし、一般国民は対象としていないが、貿易が拡大するにつれ、両者の境界線はぼやけてきている。

 中国は北朝鮮の衣料産業は軍事計画ではなく、制裁は国民に痛みを与えるとして国連の制裁対象から除いてきた。しかし北朝鮮の民間企業は国の官吏が監督しているうえに、原子力庁が管理している「朝鮮金山貿易会社」が衣料工場を経営しているという事実もある。

 制裁の抜け穴は他にもある。制裁は北朝鮮の貨物を積んでいる船舶の捜査を決めたが、外国籍の船舶は対象とされていない。

 北朝鮮が在外の大使館を通じて金を稼ぐことが規制され、ドイツでは厳しい措置が取られたが、北朝鮮は規制の弱い国にビジネスを移した。キューバ、ロシア、イラン、さらにはパキスタン、バングラデシュ、ラオスといった国からどの程度の協力が得られるだろうか。

 米国は北朝鮮の高麗航空のボイコットを呼びかけたが、高麗航空はいぜんとして中国、ロシアに飛んでいる。中国人の北朝鮮への観光旅行は盛んである。

 銀行取引の制裁については、北朝鮮は外国にある隠れ蓑の会社を使って制裁を回避しており、中国の仲介者を通じて受・送金を行っている。

 米財務省で制裁の執行にたずさわったDaniel L. Grazerは、中国は時として協力的であったが、全面的に協力したことはない、中国が北朝鮮を本気で締め上げようという戦略的決定をして初めて必要な圧力が加えられることになる、と述べた。

出 典:Jane Perlez, Yufan Huang & Paul Mozur ‘How North Korea Managed to Defy Years of Sanctions’ (New York Times, May 12, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/05/12/world/asia/north-korea-sanctions-loopholes-china-united-states-garment-industry.html


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