前ページの論説は、トランプ政権と欧州の関係が疎遠となり、また英国がEUから離脱しつつある現在、中国とEUの関係が新たに強化される方向に向かいつつある、とするイタリアのアジア専門家の論評です。
欧州から見た場合、中国の重要性は、政治・安全保障面ではなく、どうしても経済面での結びつきが中心となります。本論評が欧州と中国の関係を貿易、投資、金融、気候変動など経済面での連携を主たる対象として論じていることはやむを得ません。
一般論として言えることは、中国は国際場裏においては、ある時は、自らをグローバル・パワーの強国として位置づけ、またある時は、開発途上国のリーダーとして位置付けていることです。それらの使い分けは、もっぱら中国の都合によって決まります。本来、欧州として中国を見るとき、安全保障を含むより多角的な観点から関係全般を捉えるべきでしょう。
中国とEUは、6月初め、地球温暖化防止のための協定に署名しました。これは、米国がパリ協定から離脱することを踏まえて、署名されたものです。地球温暖化問題において、中国は米国にかわり、リーダーシップを発揮しているように見えますが、周知のように、中国の果たすべき義務は途上国としての優遇措置を享受したものです。実体として、中国が世界一位の二酸化炭素排出国であることに変わりはありません。
資本の流出規制など、一党独裁体制そのものが、不透明な「保護主義」の上に成り立っているにもかかわらず、トランプの「米国第一主義」は保護主義そのものであるとして、中国が保護主義反対のリーダーのように振舞うことがあります。人民元がSDRの基軸通貨の一つとして国際的に認められていることの不透明性、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の運営方針の秘密主義なども、中国経済の実態が十分に明らかではない点です。
EU諸国としては、トランプ政権下の米国との関係、英国のEUからの離脱を踏まえ、中国との間で新しい経済関係が生まれることを期待しているにちがいありません。しかし、やがて中国との関係の深まりとともに、中国経済の種々の厚い保護主義の現実に直面せざるを得なくなるものと思われます。
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