2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月5日

 5月27日付の英エコノミスト誌が、地方の省レベルの人事異動が進んでおり、今秋の党大会に向け、習近平が力を付けてきていると論評しています。論旨、以下の通りです。

(写真・iStock.com/majivecka/Ruslan Olinchuk)

 2016年の始め以来、習近平は31の省、直轄市および自治区のうち20の党委員会書記および27の省長(市長、主席)を交代させた。党委員会書記や省長は一般的に5年任期で、毎年12人程度が定年退職する。国家指導者の2期10年任期の中間の年は人事異動が多くなる。しかし、今回の人事は規模において尋常ではない。例えば胡錦濤時代の同じ時期(2006年1月から2007年5月)は、今回の半分の12の党委員会書記と11の省長しか交代していない。

 今回の人事は、21人が年齢や腐敗、任期満了によるものだ(12人が65歳の定年、2人が腐敗、7人が省長から同じ省の党委員会書記に横滑り)。すなわち、残りの25は習近平による人事と言って良い。

 党大会で新たな中央委員会(約370名で、約200名が中央委員、約170名が候補委員)が選ばれ、委員は国と地方の指導者が含まれる。前任者と異なり、習近平は総書記就任時点では自らの派閥を持っておらず、それを作る必要があった。今回の人事は、それを助けるだろう。また、これらの新たな省の指導者たちは、党大会の準備にも重要な役割を持つ。彼らは2000人を超える各省の代表を選ぶ。

 習近平が誰かの昇進を認めたからといって、必ずしも関係が親密であると断定できるわけではない。中国政治は派閥によって分裂しており、習近平は何らかの理由で自らの敵となる者の昇進を受け入れなければならない場合がある。とはいえ今回の人事で習近平は多くのものを得たことは間違いない。そのうち2人の新書記は習近平が上海市書記を務めていたときの同僚であり、3人の新書記および2人の直轄市新市長は習近平が浙江省にいた時の同僚だ。他にも、例えば宝鋼の総経理など重要な要職についている者も習近平に近い。今回の人事異動は習近平が影響力を強めていることを示しており、習近平の力はさらに強化されるだろう。

出 典:Economist ‘A provincial shuffle shows the power of China’s president’ (May 27, 2017)
http://www.economist.com/news/china/21722662-xi-jinping-filling-top-posts-alliesto-what-end-provincial-shuffle-shows-power


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