2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月22日

 米ブルッキングス研究所のオハンロン上席研究員が、5月25日付けウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説で、米軍を強化し、北朝鮮とは核・ミサイル開発の凍結を暫定合意し、TPPには復帰すべきだ、と述べています。論説の要旨は次の通りです。

(iStock)

 中東歴訪の「成功」の後、トランプはアジアにもう一度注意を向けるべきだ。米は北朝鮮について若干の新たな思考を加え、軍事、貿易を含む対アジア戦略を作るべきだ。

 トランプ政権はアジア太平洋軍事支出80億ドル増加計画策定の最終段階にあるといわれる。しかし、大きな額ではない。2020年頃までに米艦隊の6割(今は5割)を太平洋に展開するといってもプレゼンスを少し拡大するのみだ。中国は毎年約100億ドルずつ軍事費を増大している。更にその軍事リソースをアジア太平洋に集中させ得る。

 米国は南シナ海等の航行の自由も確保せねばならない。非軍事政策も重要であるが、今それが強力だとは言えない。

 トランプはTPPからの離脱を通告した。米国の国際経済政策は再検討が必要だったがTPPが問題だった訳ではない。TPPは、法に基づく市場経済の国々と共同して中国等(知財を尊重せず公平な貿易投資を許さない)に対処する方法だった。

 トランプ政権はTPPを復活させる必要がある。TPPを若干修正すれば、良い解決になる。例えば、知財の保護期間や労働者の権利の保護等についての再交渉である。

 どうしてもTPPに参加しないのであれば、TPPの協定テキストを二国間交渉の一次案として使うこともできる。そうすれば、米はTPPの正式な加盟国ではないが、TPP加盟国の集まりの一部となることができる。

 北朝鮮に関するトランプの直観はしっかりしたものであり、習近平との関係には大いに期待が持てる。良い軍事オプションはないので、経済圧力が望ましい戦略である。カギとなるのは中国だ。中朝貿易は年間60億ドル以上に上る。最近中国は石油輸出と石炭貿易を減らしたが、北がミサイル発射や核実験を中止し、究極的にそれを放棄するように圧力を強化すべきだ。

 安保理決議に違反して北と交易する中国企業に制裁を課すべきだ。世界は以前から北の非核化を要求してきた。長期目標として正しいことだ。しかし問題は前進しないことだ。北は今や15~20発の核兵器を保有している。

 米国は、「完全な非核化」を目指すよりも、制裁緩和と引き換えに検証可能な核・ミサイル開発、実験、生産の「凍結」という暫定合意を作るために、中国、ロシア、韓国、日本と静かに交渉すべきだ。

 トランプは軍事支出の増大のために国務省や国際開発庁の予算の大幅削減を提案しているが、それをしてはならない。幸いなことに議会は受け入れないようだ。

 オバマのリバランス政策を発展させ、若干の新たな要素を加えたこのようなアジア戦略は、実現可能であり、四面楚歌になっているトランプにとっても状況転換を図る助けになるだろう。それは米国にとっても良いことだ。

出典:Michael O’Hanlon,‘The Asia-Pacific Rebalance and Beyond’(Wall Street Journal, May 23, 2017)
https://www.wsj.com/articles/the-asia-pacific-rebalance-and-beyond-1495559015


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