2024年7月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月5日

 江沢民も胡錦濤も、今回のような任期の途中ではなく、総書記退任間近の第2期終了時の党大会において自派の拡大を図りました。現役の総書記の派閥は多数を占めるべきではないという暗黙の了解があったと言って良いでしょう。毛沢東を批判的に総括した鄧小平路線は、個人への権力集中を嫌い、そういう党規約(個人崇拝の禁止+集団指導制)をつくりました。総書記派が多数にならないようにする慣行らしきものが出来上がっていたのでしょう。

 その結果、江沢民は現役を退いた後、多数派工作に成功し、政治局常務委員会においても多数派となり、それが胡錦濤の10年、江沢民の院政を可能としました。胡錦濤は2期目の後半から必死で自派の拡大を図りましたが、習近平の時代となっても結局政治局常務委員会において多数はとれませんでした。「院政は不可」というのが党内のコンセンサスとなり、習近平は中央軍事委員会主席のポストを含め、最初からすべての権限を与えられました。

 習近平は、その流れを利用して就任早々、反腐敗反汚職を徹底的にやり、江派と胡派(共青団)をつぶしました。しかも1期目の終わりで今回のような形で自派を堂々と強化しています。そこまで習近平は力を付けたということになります。その結果、今秋の第19回党大会において、とりわけ政治局常務委員会において多数をとれば、名実ともに習近平の時代が始まることとなるでしょう。

 ただ不可思議なビジネスマンである郭文貴の発言(例えば4月19日のボイスオブアメリカにおける習近平による王岐山の調査指示)が中国の内政に相当深刻な打撃を与えている可能性があります。中国の「政治の闇」の中で見えにくかった暗闘が少々、表に出てきました。ただその読み方は実に難しいです。これまでの5年間の習近平第1期の成果は、習近平・王岐山コンビのなせる技であり、王岐山の貢献は実に大きいです。王岐山の去就如何が、第2期習近平政権の将来に大きな影響を及ぼすでしょう。

  
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