米ハーバード大学のアリソン教授が、5月30日付のニューヨーク・タイムズ紙で、中国が金体制を除去し北朝鮮を非核化し、韓国政府下に朝鮮半島を再統一するのであれば、米国は米韓同盟を終了できるのではないかと提言しています。主要点は次の通りです。
トランプ大統領は北朝鮮が米国領土に核を撃ち込む前に北朝鮮の核問題を解決してみせると述べたが、解決策の具体案は何も示していない。
習近平は4月の米中首脳会談で長距離ミサイルの実験凍結と引き換えに米国は朝鮮半島での軍事活動を中止すべきだと提案した。日韓両国を攻撃できる20の核弾頭やミサイルを金正恩が保有したまま、米国の安全保障が強化されたといえるだろうか。ティラーソン国務長官が凍結は何も解決することにはならないと述べたように、それを呑むのは難しい。
しかし、毛沢東が1950年に、またケネディが1962年に選択した決定を検討すれば、トランプは米中が支持可能な解決策を見つけることができる。
朝鮮戦争の際、米軍が中国国境に近づいた時毛沢東は米国に対して反撃に出た。これが再び起きるかもしれない。米諜報関係者は北朝鮮を軍事攻撃すれば北朝鮮は必ず反撃し、ソウルの人口の200万人が死亡すると見ている。韓国は北朝鮮に全面的な攻撃を加え、米国は韓国を支援する。習近平は米国の同盟国が朝鮮半島を統一することを認めるだろうか。
私(アリソン)が主宰するハーバードでの研究によれば、過去500年の間に新興の大国が既存の大国にとって代わろうとした事例が16件あり、そのうち12件で戦争が起きた。現在、台頭する中国が米国に挑戦しているが、このような動きはリスクを増幅させる。
今の状況はキューバ危機を見るようだ。ケネディは核ミサイルのキューバ展開を阻止するため、ソ連との核戦争も辞さない覚悟だった。ケネディが核戦争を賭して攻撃するか、あるいは米国の裏庭にソ連の核の存在を黙認するかという最後の局面に立っていた時、ケネディとフルシチョフは不可能と考えられた選択肢を検討する。ケネディはトルコから米国のミサイルを撤去することに合意した。キューバ危機の教訓は、トランプにとり賢明な忠告になる。ケネディは、「核保有国は、至高利益を守りつつも、相手を恥辱の撤退か核戦争かという選択に追い込むような対決は避けねばならない」と述べている。
習近平周辺は、米中が新たな東アジア安全保障の枠組みを検討すべきだとも提案している。在韓米軍は歴史の偶然の結果だった。北朝鮮の韓国攻撃がなかったならば、米軍は介入しなかった。だから中国が責任をもって金体制を除去し、北朝鮮を非核化し、中国に友好的な韓国政府の下に朝鮮半島を再統一するのであれば、米国はすべての在韓米軍基地を撤去し両国の軍事同盟を終了させることができるのではないか。このような考え方は通常の米国大統領は取り上げないだろう。しかし、トランプは独創そのものだ。北朝鮮について核戦争を回避する必要性の発明家になり得るのではないか。
出 典:Graham Allison ‘Thinking the Unthinkable With North Korea’ (New York Times, May 30, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/05/30/opinion/north-korea-nuclear-crisis-donald-trump.html?_r=0