2024年11月24日(日)

したたか者の流儀

2017年7月16日

 日本では普通選挙や婦人参政権と表裏をなす形で、給与の源泉徴収が行われている。すなわち、納税意識が希薄な状態で投票用紙が届いているのだ。

 一方で、日本の労働運動は安保闘争や三池闘争があったとはいえ所詮、過半は円満な労使関係であり、経営者は心の奥底では労働者に有利なこともしたいという考えがあったことであろう。近代国家で労使、納税者と政治という二つの対立軸のたたなかった国は珍しいケースといえる。それが日本だとすれば、厳しい形で対立が発生し形成されたのがフランスであろう。

 微かな匂いの段階であるが、若き大統領エマニエル・マクロンは、すでにドゴールやナポレオンを醸し出している気がする。

 既にメガネ事業者組合は臨戦態勢に入ったことであろう。国会議員もマクロンの息のかかっていない野党議員は削減案やベルサイユ会議拒否に向けて動き始めているはずだ。とはいえ人々の嫌いな増税を避けるには、サービスの低下しか方法はない。国会議員の定数削減も理にかなっている方法であろう。

 この方法ならば敵の数を限定的にすることができる。しかし、本筋である労働問題をいじれば実力行使となろう。こちらは誰も助けてくれない。国民が求める、強いリーダー像だけで労働改革はできない。唯一の可能性は景気拡大のムードの中で強行するしかない。すると頼みの綱はドイツだが、欧州中央銀行からは出口という金融引き締めジェスチャーもみえている。

 運の強い政治家は、危険な細道もうまく渡れることが多い。マクロンは先の当選で運を使い果たしていないことを祈りたい。

  
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