2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2017年7月14日

反逆との声も

 米国のアナリストらは特に、ジュニア氏とロシア人弁護士との会談に、ホワイトハウスの陰の実力者にのし上がったクシュナー上級顧問が同席していたことを重視している。同顧問は駐米ロシア大使との別の会談にも同席していたことが分かっており、今後、ロシア・ゲートの捜査を指揮するモラー特別検察官の聴取を受けるのは確実だろう。

 今回のジュニア氏のメール問題に対し、民主党や一部の共和党員からも相次いで批判の声が上がっている。民主党の副大統領候補として、クリントン氏と昨年の選挙を戦ったケイン上院議員は「捜査対象は今や司法妨害を超えたものになっている。偽証や虚偽の発言、そして反逆の可能性も浮上してきた」と厳しい姿勢を見せた。

 ロシア・ゲートのこれまでの捜査の中心はトランプ大統領が解任した米連邦捜査局(FBI)のコミー元長官に対し、捜査に手心を加えるよう圧力を加えたという「司法妨害」容疑だった。しかしジュニア氏のメール問題で、「外国からの選挙支援を禁じた」法律に抵触する疑いが浮上、「敵に援助及び便宜を与え、これに加担する行為」という憲法に定める「反逆罪」も取り沙汰される事態に変わってきたといえる。

 共和党が懸念しているのは、このメール問題が最後の新事実ではないのではないか、ということだ。つまり、ロシア・ゲートの疑惑を裏付けるような証拠がまだまだ暴露される可能性が高いということだろう。

 トランプ大統領は今月のドイツで開催されたG20首脳会議に出席した際、プーチン氏から選挙に干渉していない、という言質を取ることで、政権を覆うロシア・ゲートの暗雲を取り払いたかったはずだ。だが、現実は、欧州からの帰国途上のエアフォース・ワン(大統領専用機)の機内で、ジュニア氏の弁明声明の立案に悩まされるという結果になった。

 大統領のイライラは募り、側近らを罵倒することも多くなったという。米メディアによると、大統領の法律顧問団とクシュナー顧問とのあつれきも激化している。政権を覆うこの危機の中で、ペンス副大統領はロシア・ゲートから距離を置こうとしている。副大統領報道官はペンス氏が大統領の政策遂行に引き続き取り組んでいるとし、副大統領候補になる前の話は重視していない、との声明を発表した。同氏が副大統領候補になったのはジュニア氏のロシア人弁護士との会談から1カ月後のことだった。ロシア・ゲートの火の粉をかぶりたくないという思惑が見え隠れしているようだ。

  
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