サイバー空間の権力論

2017年7月28日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

(1)電子決済システム

 本連載でも取り上げたスマホとQRコードだけで実行可能な「電子決済」機能は、中国ITの特徴とも言えるだろう。日本のように読み取り専用装置を必要とせず、決済にかかる手数料もほぼ無料ということもあり、都市部では現金利用機会の減少がレジなどの簡略化にもつながっている。電子決済はこのように非常に便利であることから、自転車シェア普及の大きな要因のひとつだ。

(2)中国交通事情

 自転車シェア普及のもうひとつの要因は、中国の交通事情にあるだろう。都市部の渋滞や、公共交通機関だけでは賄いきれない人口過密などの問題もあり、自転車は手軽な移動手段であることがうかがえる。日本においても1駅2駅程度なら自転車の移動の方が素早い場合も多いだろうが、中国ではその手軽さがさらに重要なものとなる。

 もうひとつは基本的に自転車が「放置可能」な点である。日本の場合、利用後は特定の駐輪場に自転車を返却しなくてはならないが、中国においては返却場所が指定されない(繁華街などで特定の場所が指定される等、多少の指定はあるが、日本に比べれば利便性は高い)。さらに自転車は都市部であればどこにいても確認できるほど多くの台数が投入されている。故にユーザーは自分の都合のよい場所から乗り、都合のよい場所で乗り捨てることが可能だ。

 ただし最近では放置自転車が邪魔だったり、景観を損ねるという理由の反対意見も多く、場所によっては駐輪場を指定する方向にあるという。こうした対応がどの程度ユーザーの利用に影響するかはわからないが、すでに大量のユーザーの「シェア自転車習慣」を獲得したことによる、企業の先行者メリットは大きい。

シェア業界に参入した「傘」
しかし30万本が行方不明に

 中国のシェア文化は他にもシェアバイクなど、いくつものサービスが展開されている。そこで自転車シェアの成功に商機をみた「U Umbrella」という中国企業は、2017年4月に1000万元(約1億7000万円)の予算を投じ、傘のシェアサービスを上海や南京、広州など国内11都市で開始した。このサービスもスマホアプリから19元(約320円)の保証金を支払い、送られてきた傘についた鍵のアンロックキーで傘の利用が可能になるもの。30分0.5元(約8円)で利用できるほか、自転車シェアと同じく街中のバーやフェンスに放置可能なサービスだ。

 しかしこの傘シェアサービス、開始後わずか3カ月で30万本の傘が行方不明になったとして、日本のネットニュースサイト英ガーディアン紙などでも報道された。GPSは搭載されているものの、未返却による罰則規定がないことから、大多数は傘を街中に返却せず自宅に持ち帰ったものと思われる。自宅に持ち帰ったことが窃盗にあたるかどうかの判断は微妙だが、いずれにせよGPSで追跡するにも費用がかさむため、回収は困難が予想される。傘の補充には1本あたり60元(約1000円)かかるが、創業者は強気にも2017年中に3000万本の傘を中国各地に投入予定だという。

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