2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月3日

 今回の実験が米国の緊張感を大きく高めたことは間違いないでしょう。北朝鮮が或る日突然ICBMによる米国の攻撃に踏み切る脅威というよりも、より現実的な問題は、朝鮮半島で紛争が発生した場合、米国本土が核の脅威に晒されていれば、米軍の行動が大きく制約を受けるということにあります。

 7月4日、ティラーソン国務長官は声明を発表し、ミサイルがICBMであるとの認識に立ち、脅威のエスカレーションを非難し、グローバルな行動を呼びかけました。

 この論説およびロバート・ジョセフ(7月3日付 National Review掲載の論説)が論じていることは、包括的な戦略をもって北朝鮮を封じ込め、内部からの政権交代(regime change)を促すというものです。政権交代につながるか否かはともかく、封じ込めをいうなら、金融制裁を強化することです。金融制裁は米国の金融システムないし国際金融システムから北朝鮮を遮断します。米国が有する最も強力な手段であり、その有効性はかつてのBanco Delta Asiaのケースで立証されています。具体的には、去る6月29日、財務省は北朝鮮と取り引きがあることを理由に中国の丹東銀行に制裁を発動しましたが、今後も中国に気兼ねすることなく、この制裁を推進すべきです。

 封じ込め、あるいはティラーソンのいうグローバルな行動をいうのなら、ASEAN諸国(すべて北朝鮮と外交関係を有する)に何等かの行動をとるよう要請することが考えられて良いでしょう。経済的効果はそれ程のものではないでしょうが、アジアの隣国の行動に政治的意味があります。先のクアラルンプールにおける金正男暗殺事件に際するマレーシアの対応は腰砕けで、甚だしく面白くないものでした。

 ロバート・ジョセフが論じている封じ込めの提案の一つに、「北朝鮮の国境を越えて飛来するミサイルを撃墜することについて、予め韓国および日本と了解を遂げる」というのがあります。軍事力の行使として米国が一番に考えるのは、これだと思われます。2006年6月にウイリアム・ペリーとアシュトン・カーターが「テポドン」が発射台にあるうちに巡航ミサイルで破壊することを提案しました。ICBMだと発射台にあるうちにやらないと、破壊出来ないのかも知れません。その他のミサイルを撃墜することにどれ程の意味があるかという問題もあります。いずれにせよ、日本として、こういう手段をどう考えるのかという問題があるでしょう。

  
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