2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月3日

 7月4日付のウォールストリート・ジャーナル紙が、北朝鮮のICBM発射実験を受けて、封じ込めによる政権交代を狙った戦略を構築すべきだとする社説を掲載しています。要旨は以下の通りです。

(iStock.com/ikryannikovgmailcom/kay_mosk/puruan/asantosg/Shendart)

 7月4日、北朝鮮は初めてのICBM(大陸間弾道ミサイル)と思われるミサイル発射実験を行った。米国の独立記念日に実施するという象徴的意味合いもさることながら、その技術的成功の意味はもっと重大である。北朝鮮は米国の脅威となる核弾頭搭載ICBMの獲得に進みつつあるが、その速度に米国は緊急に対応する必要がある。

 「火星14号」と呼ばれるミサイルの射程にはアラスカは入るが、本土の48州はまだ射程外である。しかし、北朝鮮は長距離ミサイルに係わる殆どの問題を克服したようである。重要な問題の一つは、このミサイルが5月14日に発射実験に成功した中距離ミサイル「火星12号」を土台としているかどうかである。そのエンジンは、独自に開発された高性能のものであったが、北朝鮮が、今回、これに第二段ロケットを加えたのであれば、米国はロサンゼルスやシカゴが直接脅威に晒される推定時期を前倒しすることが必要となる。

 トランプ政権は難しい決定を迫られている。更なる制裁は金正恩体制に圧力をかけることになるので、実行する価値がある。しかし、韓国、日本と同様、米国も20発の核弾頭と生物化学兵器を持つ北朝鮮の攻撃に程なく脆弱となる。米国による先制攻撃は排除は出来ないが、北朝鮮のミサイルが1発でも生き残れば、韓国に対する核攻撃のリスクを冒すことになる。北朝鮮の核開発計画を「凍結」させるための外交を過去三つの政権は試みて失敗した。

 最善のオプションは、元国務次官ロバート・ジョセフが論ずるように、金正恩政権の交代を狙った包括的戦略である。抑止とミサイル防衛の強化、ブッシュ政権時代の核とミサイル拡散防止のための監視措置の復活、この地域の諸国に北朝鮮との関係を断絶させること、北朝鮮が実験するミサイルを撃墜すること、金正恩政権の犯罪のニュースを北朝鮮国民に宣伝すること、がそれである。

 米国は中国が問題であることも認識せねばならない。北朝鮮の中国との貿易は第1四半期に37.4%増大した。中国企業は北朝鮮の鉱物資源と安い労働力を利用して利益を得る一方、核ミサイル計画のための材料と技術を提供している。

 米国は中国の指導者が核武装の北朝鮮はその利益とならないと悟ることに希望を託して来た。しかし、北京の行動は北朝鮮の行動が米国を北東アジアから追い出すことを希望していることを示している。中国の助力の有無に拘わらず、金正恩政権の打倒を狙った一層厳しい戦略にのみ、数百万の米国民の生命に対する脅威を除去するチャンスがある。

出典:Wall Street Journal ‘The North Korean Missile Crisis’ (July 4, 2017)
https://www.wsj.com/articles/the-north-korean-missile-crisis-1499188198


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