2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月26日

 ブルース・クリングナー(ヘリテージ財団上級研究員)とスー・ミ・テリー(元CIA分析官、現バウワー・グループ・アジア・コンサルの朝鮮部長)が連名で「我々は北朝鮮の代表者との話し合いに参加した。我々が学んだことはこれだ」との記事を、6月22日付けワシントン・ポスト紙に寄稿しています。記事の要旨は次の通りです。

(iStock.com/aurielaki)

 対北朝鮮「関与」の主張者は、北の政権がいかに酷くても、北のミサイル・核計画を止める唯一の道は外交である、と主張している。しかし、金正恩と話し合うのは時間の無駄と思われる。

 最近、我々、米・日・中・韓の代表者からなるグループが六者協議の再開の可能性を探るためにスウェーデンで北の代表に会ったが、話し合いの後、より悲観的になった。

 北の高官は、北は核兵器増強とICBM試験をやめることはないと明言、これらの計画についての柔軟性や交渉意欲は何ら示されなかった。北朝鮮は一貫して、非核化は議題ではないとした。

 我々は、経済・外交上の利益または安全の保障の組み合わせで北に過去の交渉での約束と国連の決議を守るよう仕向けられるか、何度も確かめようとしたが、答えは断固としたノーであった。北は、サダム・フセインとカダフィの運命を例に引きつつ、核計画は政権の最終的な生命維持装置であると言った。

 北側の一人は、「まず核保有国として認めよ。その後、平和条約について話し合うか、戦うか。我々は両方に準備・用意がある」と述べた。北側は、敵対行為を自ら始めることはないが、挑発されれば戦うと言っている。北は、朝鮮戦争を終わらせ北朝鮮を国家として認める平和条約は、北の長期的目標であり、朝鮮半島からの米軍撤退につなげたいと考えている。

 過去の同じような会談と違っていたのは、北側の過剰なまでの自信であった。核・ミサイル開発での成功の結果であろう。北側は、核計画は一般的な「米国の敵対政策」への対応であると明らかにした。韓国が何を提示しようと北が核計画を変更することはないだろう。

 トランプ大統領は国連決議をもっと完全に守るとの中国の約束に希望を託している。しかし彼も今はうまく行っていないことを認めている。トランプは6月20日、「習主席の努力を評価するが、結果が出ていない」とツイートした。

 トランプはオバマの「戦略的忍耐」を批判したが、彼の政策はオバマ政策とそう違わない。「最大限の圧力」と言うが、中国人、北朝鮮人の米国法違反を追及していない。その上、北と交渉するのか、ICBM阻止のために軍事行動をとるのか、はっきりしない。

 核兵器を持ちソウルに1万以上の大砲を向けている国に先制攻撃を行うのは良い考えではない。我々との会談で北の高官は「核兵器を苦労して作ったのはそれを使う前に滅ぼされるためではない」と強調した。もし米国が北に軍事攻撃をすれば、北は数十万、数百万の死傷者が出る報復を行うということである。

 先制攻撃よりも、第2次制裁を含め制裁強化をする方が望ましい。これは戦争の危険を避けて北に罰を与え、金政権の崩壊の日を早め得る。制裁強化は交渉を再び開始するより実際的な措置であろう。

出典:Bruce Klingner & Sue Mi Terry,‘We participated in talks with North Korean representatives. This is what we learned.’(Washington Post, June 22, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/we-participated-in-talks-with-north-korean-representatives-this-is-what-we-learned/2017/06/22/8c838284-577b-11e7-ba90-f5875b7d1876_story.html


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