2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月20日

 6月14日付のニューヨーク・タイムズ紙は、6月12日のロシア諸都市での抗議活動がプーチン政権の腐敗という痛いところをついている、と社説で述べています。社説の要旨は、次の通りです。アレクセイ・ナヴァルヌイ(今回の反腐敗抗議を呼びかけ、再度逮捕された)が来年3月の大統領選挙でプーチンを敗北させることはない。プーチンは権力を掌握しており、引き続き人気があり、ロシアのテレビも支配している。それならなぜこれらのデモが世界中の関心を引いているのか。

(iStock.com/Evgenii_Bobrov/vDraw/Naddiya/sundatoon)

 一つの理由は、プーチンは全権を掌握しているのに、ロシア人を沈黙させられないことを、これらのデモは示しているからである。ロシア人の大多数はプーチンがもたらした安定を評価し、ロシアの問題は悪い西側が作ったとのプーチンの主張を受け入れているが、ナヴァルヌイなどはインターネットやソーシャル・メディアを動員し、主要な都市で反対派を維持するのに成功している。モスクワでデモしたのは数千人だが、多くは若者で逮捕も覚悟で参加した。逮捕者はモスクワで700人以上、サンクトペテルブルクで300人出ている。

 ナヴァルヌイは動員に長けている。彼は民族主義的との批判も受けているが、支配エリートの腐敗への抗議をブログで呼びかけている。ロシアの支配層の富は、経済状態が悪くなる中、人々の感情を害している。ナヴァルヌイは、メドヴェージェフ首相の豪邸、ヨット、ブドウ園等を暴露した。メドヴェージェフの所有地にアヒル小屋があったので、デモ隊はおもちゃのアヒルを持ち出した。

 ナヴァルヌイは、プーチンが「政治的安定、国家の強化」を祝うだろう国民の祝日「ロシアの日」に抗議デモを呼びかけた。デモの場所を最後の瞬間にモスクワの中心のトベルスカヤ通り(ロシアの歴史的出来事の再現のために交通が遮断されていた)に移した。この「プーチンなきロシア」を叫びながらロシアの国旗を持った抗議者に対し、警官隊が弾圧を加えた。ナヴァルヌイ自身は自宅で逮捕され、30日間拘禁の判決を受けた。

 国営テレビはこの抗議を無視し、プーチンが「ロシアの日」の授賞式典に出たことを報じた。しかし抗議がなかった振りは続けられない。これらの抗議はプーチンの統治の弱点(広範な腐敗と説明責任の欠如)を突いている。それはロシアのどこでもロシア人になじみ深いものであり、プーチンが簡単に敵対的な西側の策謀と片付けられないものである。

出典:New York Times ‘How to Protest in Russia’ (June 14, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/06/14/opinion/aleksei-navalny-protest-in-russia.html?_r=0


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