6月12日、ロシアで行われた反プーチン・反腐敗デモは、ほんの小規模なものも数えたものでしょうが、140以上の都市で行われたと言われています。3月の反プーチンデモは80都市で行われたとされていました。参加人数がどうであったかわかりませんが、地理的には広がってきています。
ナヴァルヌイ(弁護士、ブロガー)が呼びかけたものですが、彼の動員力は大したものです。その背景には国民の政権に対する不満があります。ロシア第3の都市、ノボシビルスクでは公共料金値上げ反対デモがありましたし、トラック運転手は通行料の値上げに反対して、モスクワに押し寄せましたし、タタルスタンでは銀行経営の失敗で預金が引き出せないということでデモが起きました。モスクワではソ連時代のアパート取り壊しで130万人が移転を余儀なくされようとしており、反対デモが起きています。ただ、この場合はソビャーニン市長への反対で、プーチン反対ではありません。ロシアがプーチンのもとで良く治まっているとのイメージは正確なイメージではありません。特にナヴァルヌイが腐敗を政権批判の中心に置いたのが有効であるように思われます。
ただこのナヴァルヌイの主導する反プーチンの動きが来年3月に予定されている大統領選挙でのプーチン苦戦につながるかと言うと、この社説も指摘するようにそういうことはないと判断されます。ナヴァルヌイは2018年の大統領選挙に立候補し、プーチンに挑戦しようとしていますが、過去の犯罪(公金横領罪)のゆえに大統領選挙に出馬できないとされています。ナヴァルヌイはでっち上げであると言っていますが、同人が大統領選に出るにはまだ越えなければならない障害があります。そのうえ、ナヴァルヌイは腐敗追及ではよくやっていますが、ロシア民族主義的主張もしており、リベラル層の一致した支持を受けているわけではありません。仮に立候補が認められても、プーチンにとっては戦いやすい相手になるのではないでしょうか。
今のロシア議会では、プーチンの与党、統一ロシアが4分の3以上の議席を持ち、共産党が42議席、極右の自民党が39議席、公正ロシアが23議席、無所属3議席で、プーチン反対勢力はほぼ存在しません。ヤブリンスキーの「ヤブロコ」がプーチンの政策に対抗する綱領を持っていますが、政治的には無力化されており、プーチン反対のネムツォフは殺害されてしまいました。
おそらくプーチンが来年大統領に再選するのは確実でしょう。しかし、国民の不満は経済状況の悪化とともに深まっていくと考えられます。2024年までのプーチン第4期が順調なものになるかはわかりません。
プーチン政権は簡単に言うとkleptocracyです。習近平は腐敗撲滅をしないと共産党政権は持たないと考え、汚職追放を重視していますが、プーチン政権は利権分配の上に成り立っています。これがどこまで続くか、興味深い問題です。
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