世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月26日

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 この記事は、特に新しい論点を提示するものではありませんが、北朝鮮の考え方を直に聞いた報告であり、日本にとっても、政策決定のために役立ちます。この記事は、会議で表明された北の考えを正確に反映していると思われます。

 朝鮮半島の軍事バランスは、圧倒的に米側が強く、巨人と小人の対立です。したがって、北が軍事的敵対行為を始めることは自殺行為になるので、まずありえません。スウェーデンの会議でも、北側も「自分から敵対行為を始めることはない。挑発された場合だけである」と説明したようです。そういうことなのでしょう。

 何が挑発に当たるのか、北の考えは明確に示されていません。北は、かつては「安保理制裁決議の採択は宣戦布告に当たる」と言っていたこともあります。しかし、米国に対して、それを理由に軍事的対応をしたことはありません。北は、大きな声で吠えるけれども嚙みつかない犬のようなものです。制裁強化に対しても低強度の軍事行動に対しても、北の軍事的対応は抑制されたものになる、とみてよいのではないでしょうか。力の差が歴然としている中では、そうなるでしょう。

 したがって、米国が堪忍袋の緒を切らさない限り朝鮮戦争の再現はありそうにないです。米国の堪忍袋の大きさについては、キューバ危機の経験から判断してどうなのか、判断が難しいところです。

 北との外交、交渉に関して言うと、この記事が指摘するように時間の無駄でしょう。「平和条約を先行させろ」などの要求が出て来て、交渉は進まず、何も得られないでしょう。文在寅との対話など、北は相手にしないでしょう。この点についてのクリングナーなどの判断には賛成です。

 中国を含む周辺国による制裁強化はありうる策です。中国は、「北の政権が崩壊すれば、韓国主導の統一になり、米軍が鴨緑江にまで来る。難民が中国東北地方に流れ込む」と心配しているようです。それに対しては、北の崩壊は狙わない、米軍を鴨緑江にまで行かせることはない、韓国主導統一はしないなどの保証を中国に与えればよいでしょう。その上で中国に制裁の強化を求めればよいのです。東西ドイツの統一に当たり、東独の地域にNATO軍は入れないとの約束をしたこともあります。韓国も性急な統一を望んでいるわけではありません。

 朝鮮半島での大規模紛争は避けつつ、制裁強化、低強度の軍事圧力その他をかけていくことが核問題の解決に役立つでしょう。米中が朝鮮半島の将来像について共通の了解に達すれば事態を動かせると思われます。そして、核兵器国として、そうすることが米中の責任です。

  
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