2024年7月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月21日

 ワシントン・ポスト紙の6月19日付け社説は、米国にはISがシリアで敗北した後どうするかの戦略がなく、このままではイランとロシアの進出を許してしまう、と警告を発しています。社説の要旨は以下の通りです。

(iStock.com/dikobraziy/filo/ S-S-S/CNuisin)

 イラクとシリアでISを破るとの米国の目的は達成されつつあるが、IS敗北後どのような安全保障秩序がとって代わるか、外部のどの国が新しい秩序の維持者になるかという問題につき、トランプ政権には戦略があるとは思えない。

 ISの撤去後、イランはラッカの南の油田地帯と、バグダッドとダマスカスの地上の回廊を支配しようと企んでおり、ロシアはロシアで、地域から米国を追い出そうとしている。

 シリアとイランは、トランプ政権はISと関係のないシリアの砂漠での戦闘に巻き込まれるよりは、同地域を放棄するのではないかと考えている可能性がある。他方、ロシアは6月18日のシリア戦闘機撃墜につき米国に激しく抗議し、シリア上空で米軍機に挑戦すると脅したが、これは、ロシアがシリアとイランを強く支持している証左である。

 米国にはシリアの南部と東部を支配する戦略的理由はないが、イランがロシアの支援を受けて、テヘランから地中海までを支配するのを防ぐのは、米国にとって重要である。そのようなイランの支配はイスラエルにとって生存にかかわる脅威となるだろう。イスラエルはすでに、ゴラン高原に近接するシリア領へのイランの浸透を防ぐのに四苦八苦している。イランの支配は米国の同盟国であるイラクとヨルダンを弱める。

 イランとロシアに対抗するには、米国の支援する勢力による戦術的防衛が必要なのに加えて、米国と同盟国に受け入れ可能な、地域の安全保障秩序を作るより広い戦略が要る。そのためにはトランプ政権はシリアの新しい政治秩序のための交渉の推進を図るとともに、イラン、ロシア、シリア政府に対し軍事的または経済的圧力を加える必要がある。トランプ政権はシリアの空域についてのロシアの脅しを拒絶するのみならず、プーチンに対し、もしイランとシリアで共同歩調をとるならば、米ロ関係をリセットする機会を失うことを明らかにすべきである。

出典:‘What happens after the Islamic State is defeated in Iraq and Syria’(Washington Post, June 19, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/what-happens-after-the-islamic-state-is-defeated-in-iraq-and-syria/2017/06/19/f0fe363a-5516-11e7-b38e-35fd8e0c288f_story.html


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