世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月21日

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 トランプ政権はIS壊滅を中東政策の柱に掲げています。それ自体は重要なことですが、ISが撃退された後のシリア(そしてイラク)をどうするかについての戦略構想がないのは社説の言う通りです。

 オバマ政権は当初からシリアへの介入に及び腰でした。アフガニスタンとイラクの「羹に懲りた」結果であり、理解できないことではありません。しかし、「羹に懲りた」のは地上軍による本格的な軍事介入についてであり、シリアへの介入はそのような全面的な軍事介入ではありません。

 トランプ政権はオバマ政権のシリア不介入策を継いだように見えますが、理由は異なります。トランプ政権にはそもそもシリア、そしてさらには広く中東に関する戦略がないのです。

 しかし、シリアをめぐる情勢は大きく変化しようとしており、このままではシリア、およびシリアを中心とする地域での米国の影響力は失われかねません。同地域におけるロシアの影響力の増大は、同地域に限らず、世界における米国とロシアの勢力争いで米国を不利な立場に置くことになります。イランの影響力の増大は、イランの脅威を強調するトランプ政権にとってのみならず、米国の同盟国、特にイスラエルとサウジにとって放置できないことです。

 しかし、トランプ政権に何ができるかということになると、効果的な具体策はなかなか見えて来ません。

 社説は、「イラン、ロシア、シリア政府に対し軍事的または経済的圧力を加える必要がある」と言っていますが、具体的に何を意味するかは明らかでありません。

 またロシアについては、「もしロシアがイランとシリアで共同歩調をとるならば、米ロ関係をリセットする機会を失うことを明らかにすべきである」と述べていますが、果たしてトランプ政権がそのような立場をとれるか、仮にとったとしても効果が期待されるのかは分かりません。

 いずれにせよ、シリア、イラクからのISの駆逐が現実のものとなりつつある今、トランプ政権には、シリア、そしてイラクについての米国の戦略を早急に検討することが求められています。

  
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