2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月7日

 もちろんこのアイディアで全てを一挙に解決できるわけではない。北朝鮮に検証可能で実施可能な永続性のある制約をかけると言う問題に答えていない。もし北朝鮮が望んでいるのが米から何かを引き出すということなら、このやり方ではあまり前に進めないかもしれない。しかし、北朝鮮については、良い選択肢がない。我々は成功の機会のある戦略、失敗しても我々に優位を与える戦略を追求すべきである。

出典:Jake Sullivan & Victor Cha,‘The right way to play the China card on North Korea’(Washington Post, July 5, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-right-way-to-play-the-china-card-on-north-korea/2017/07/05/6d223aa0-6187-11e7-a4f7-af34fc1d9d39_story.html

 ヴィクター・チャは国家安全保障会議の元アジア部長であり、サリバンはバイデン副大統領の補佐官、オバマ政権での国務省の政策企画部長を務めた人です。二人とも、北の核問題について長い間携わってきた人であり、そういう両名の意見ですから、注目に値します。

 両名の提案は、中国に北朝鮮問題の解決についてより大きな役割を果たさせるということで、中国と北朝鮮で核・ミサイル開発について凍結し、さらに巻き戻すとの合意を結んでもらう、その合意の順守検証をIAEAにさせる、というものです。そして、見返りとして中国が北朝鮮の安全を保障し、経済面での支援策を提供するという構想です。

 今は中国による対北制裁の完全履行、さらなる制裁実施などを議論している段階にあり、この政策提言は方向性が相当に違います。その上、もしトランプがこの提言を受け入れても、中国が北朝鮮と話し合い、凍結・巻き戻しの合意を作ろうとするか、疑問です。中国は北の核・ミサイル問題は米朝間の問題であると主張してきました。このような提案を、中国が拒否する可能性は高いです。さらに、北としては、安全の保障などは米国から得て初めて意味があるということであり、こういう対中合意に応じない可能性が高いでしょう。

 しかし、両名が言うように、そもそも北の核・ミサイルについては、よい選択肢がないのも事実であり、米中間で話し合う際に、論説が言うような構想を中国が提起する価値はあるように思われる。

 北のICBM開発の成功に関し、日本として考えるべきことは、米国の安全保障と日本の安全保障が、それによってdecoupling(切り離し)されないかということです。1980年代、ソ連の中距離弾道ミサイルSS20が欧州に配備されたときに、西独のシュミット首相が、米国は例えばハンブルクを守るためにニューヨークを犠牲にする気がないとして、欧州と米国の安全保障がdecouplingされると主張、それを防ぐために、欧州に米核兵器を配備すること、SS20の攻撃に対しては欧州から反撃することを主張しました。同じような状況が、北がICBMで米国の主要都市を攻撃する能力を持った時には生じてきます。この点をよく考えてみる必要があります。非核三原則の見直し、特に「持ち込ませず」の見直しを議論すべきでしょう。

 なお、FOXニュースで、クラウトハマー論説委員は、中国に真剣な取り組みをさせるためには日本が核武装するか、米国の核を韓国に再配備するかであると、述べています。これもゲーム・チェンジャーになるでしょう。

  
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