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2017年8月5日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

本気になったトヨタ

 今回の提携により、これから市場が拡大するとみられるEVの生産体制についての自動車メーカーの色分けが鮮明になった。トヨタは05年に富士重工業(現在のSUBARU)に出資、16年にスズキと業務提携するなど関係を強化してきている。SUBARUは21年にはトヨタのEV技術などを使ってEVを発売するとしており、ここでもトヨタの技術に依存する。今回の提携により、トヨタとしてはEV技術の提供先がまた1社増えることになり、技術開発のコスト削減にもつながる。

 トヨタはこれまでハイブリッド車が好調だったことから、EVの開発にはそれほど重点を置いていなかった。ハイブリッド車の次に来る次世代環境対策車は水素を燃料としたFCV(燃料電池車)になるとみていた。EVについては「いつでも出せる」と余裕の構えだったが、最大の中国市場でEVの伸びが見込まれるなどEV化の流れが鮮明になったことから方針を転換、昨年末に豊田社長自らが総括を務める新たなEV専門の開発部署を設けた。最近では中国でEVの現地生産に乗り出す方針も明らかにしており、トヨタがEV開発に本気で取り組み始めた証拠ともいえる。

 日産自動車は16年5月に三菱自動車と資本提携し戦略的アライアンスを締結した。EVに関しては両社が協力して開発を進める方針だ。今年の秋に日産は現在のEV「リーフ」の走行距離280キロを大幅に上回る新型車を投入する計画で、この新型車をEV化の流れにある世界市場に供給することによりEVメーカーとしての存在感を高めたい考えだ。

 ホンダは18年までに、中国市場専用モデルと中国以外の市場向けの2種類のEVを発売する。中国では、深刻な大気汚染を改善するために政府が打ち出したNEV(ニュー・エネルギー・ビークル)政策の実行により、EV化が急速に進んでいる。このNEVの基準を満たすEVを早期に発売することによりEV市場のシェアを確保したい狙いがある。同社は昨年から中国市場で日産、トヨタをも上回る勢いで大幅に販売台数を伸ばしており、大きな収益源にもなっていることから中国市場重視の姿勢を打ち出している。ホンダはFCVの燃料電池基幹部品の生産では米国の大手GMと提携しているが、EVについては独自路線を維持している。

加速する世界のEV化

 中国以外の世界の主要市場では、米国は先進的な環境政策を進めているカリフォルニア州が自動車メーカーに対して販売台数の一定割合をEVなどの排気ガスゼロ車(ZEV)とするよう義務付けたZEV規制を実施、今後、規制を強化しようとしている。ZEVにはトヨタが得意とするハイブリッド車は含まれないため、日本メーカーは今後EVを増産せざるを得なくなる。この規制は全米に広がる可能性があり、EV対応を急がないと米国市場でのシェアを失うことになる。

 また欧州では英国とフランスが7月に、2040年に石油を燃料としたガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると発表、この流れはドイツなどほかの欧州諸国も追随する可能性が指摘されており、自動車業界に衝撃を与えた。欧州の自動車メーカーではスウェーデンのボルボが、19年でガソリン車の生産を中止し、すべてをEV、HVにすると表明、メーカーも率先して対応しようとしている。

  
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