2024年11月22日(金)

ちょっと寄り道うまいもの

2010年9月20日

周防灘の河口汽水域で、伝統的な竹筒漁を続ける森林保治さん

 ただ、そうはいっても、お江戸のように、鰻の特別な文化といえるようなものは存在していなかったから、自己流というか、独特の調理法を作り上げていった。

 基本は関西のそれのように蒸さずに直接焼くというが、食感が違う。見せてもらうと、普通にはしない大量の串を刺す。そして、焼きながら折るような独特の仕草。串からも火が入り、その穴からも脂が落ちる。折りたたみつつ焼くことで、また、脂が落ちる。そして、素人目には焼きすぎかと思われるほどにしっかりと焼く。

 そうやって出来上がったものは、なるほど、これだからこそ、万葉集の時代から、愛されてきたのだと納得する魔味である。

 鰻の天然ものは、特に個体差が大きいようにも思う。だから、一概にこのような味とはいえぬが、香気としっかりとした食感は特別のものがある。

 まあ、ここの鰻は養殖ものも、生半可なものではないので、十分に満ち足りる。天然、養殖の食べ比べも楽しいかもしれない。違いが分かるかどうか。それにしても、白焼き、鰻重、あるいは同じ福岡県の柳川風のせいろ蒸し、どれで試すか。考えるだけでも楽しい。

 一緒に行けない家族には、鰻茶漬け用の瓶詰めがある。加賀の棒茶あたりにワサビを添えて茶漬けにしたら、これまた至福の味わい。源内先生にも教えたい、季節を越えた美味。

■鰻料理 田舎庵 小倉店
山陽新幹線小倉駅から徒歩約5分
北九州市小倉北区鍛冶町1-1-13 ☎093(551)0851
営業時間/11時〜21時30分
定休日/無休(年末年始を除く)

◆ 「ひととき」2010年10月号より

 

 

 

  


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